九州、沖縄、韓国に被害をもたらした台風15号(国際名コニー)は26日午前6時ごろ、日本海上で温帯低気圧に変わったが、北朝鮮にも被害を及ぼしていた。

北朝鮮の朝鮮中央テレビは26日、馬息嶺(マシンリョン)374ミリ、元山(ウォンサン)233ミリ、安辺(アンビョン)208ミリなど主に北朝鮮東海岸南部で大雨が降ったと伝えている。しかし、公式報道で伝えられなかった地域においても「甚大な被害が発生した」とデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。

被害があったのは東海岸北部の羅先(ラソン)経済特区。先週金曜日(21日)から視界を遮るほどのどしゃ降りが3日間続き、街全体が浸水し、山から流されてきた木によって多くの家屋が破壊された。浸水地域の住民は高台に避難している。

保安署(警察署)は人民班(町内会)の班長を通じて、被害の把握に乗り出したが、住民たちはてんでバラバラに避難しているため安否確認が困難な状況だ。

家も田畑も流されて「どうやって生きていけばいいんだ」と嘆き悲しむ人、行方不明になった子供を探して歩く人、床上浸水した家の中からテレビやミシンなどの家財道具を取り出す作業をする人などで羅先市内は「まるで戦場のようだった」(情報筋)という。

一方、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は、羅先市内では少なくとも40人以上が死亡、150戸が全壊、860戸が一部半壊し、被災者は5200戸、1万1000人に及ぶと伝えている。

被災地では衣類や飲水、食料が不足しており、朝鮮赤十字会咸鏡北道支部の要請で、国際赤十字社が緊急支援に乗り出した。

中国の延辺日報は、23日まで開かれていた「第5回羅先国際商品展示会」に参加していた多くの外国人が、足止めをくらった。大雨によって中国やロシアに向かう道路や橋が流されたからだ。その数は中国人観光客だけで484人にのぼる。

中国琿春市当局は24日午後、掘削機、トラック、ジープとともに人員を、国境から15キロ北朝鮮に入ったところで道路緊急補修作業にあたったが、複数箇所で10メートル以上にわたり道路が崩壊していたため、当日の作業は諦め一度帰国した。

対策会議を経て、翌日ダンプ車やトレーラーなど装備を増強して復旧作業にあたった。作業は順調に進み、中国人観光客は25日午後3時に中国に無事帰国したとのことだ。

ちなみに、羅先からわずか数十キロしか離れていない中国では、大きな被害報告は今のところ入っていない。

今回の被害に限らず、日韓中の三カ国では軽い被害で済む気象災害が、北朝鮮では甚大な被害をもたらすケースが多発している。

北朝鮮で被害が多発、拡大する原因についてデイリーNKは、防災インフラの未整備を指摘してきた。既存のインフラも整備不足や老朽化によって効果がなく、被害を拡大させる大きな原因だ。

「羅先地域」は、経済特区に指定されていることから、北朝鮮の他都に比べると、比較的インフラは整備されているはずだが、今回の大雨にはひとたまりもなかった。

被害に遭った住民たちは、この間、準戦時状態に勤しんでいた北朝鮮当局を批判する。

「準戦時状態の避難訓練をやるんだったら、台風の避難訓練をやるべき。国境に脱北防止用の鉄条網を張る暇があれば、防災インフラを整備しろ」

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