北朝鮮と韓国の間で高まっていた軍事的緊張は、双方の合意により緩和された。一方、準戦時状態まで宣言した北朝鮮において、住民の生命線である市場が閉鎖されたり、多数の住民が前線から離れた地域に避難するなど混乱が生じたという話しが伝わってきた。

軍事境界線に近い江原道(カンウォンド)と咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋は語る。

「準戦時状態の宣言に伴い、昼夜問わず避難訓練が繰り返されたことで、秋の収穫に支障が生じている。20日、21日の両日は、市場閉鎖されるなど生活に深刻な影響が出ている」(江原道の情報筋)

「当局から『持ち場を離れず緊張しながら生活せよ』という指示が下されたため、出張証明書の発行が制限され旅行が禁止された。また、歌舞音曲や冠婚葬祭も制限された」(咸鏡北道の情報筋)

前線に近い地域住民が疎開する光景も見られたことから、住民の不安感をさらに煽ったという。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の咸鏡北道の情報筋も、北朝鮮国内の様子を次のように伝えた。

「準戦時状態が宣言された直後は、それほど緊張感はなかったが、24日朝に清津(チョンジン)駅に到着した平壌発羅先行の定期列車に大量の住民が乗車していたという話が、町中に伝わり、一気に緊張感が高まった」

列車に乗っていたのは、軍事境界線に面した黄海道(ファンヘド)からやってきた子どもたちや老人たちだった。21日から22日にかけて故郷を離れ列車の乗り継ぎ2~日かけてようやく清津に到着したという。

さらに、清津から500キロ南に位置し、平壌と北東部を結ぶ主要ターミナルの高原(コウォン)駅には、列車を待つ数千人の避難民がいるという話が広がり、清津市民を不安な心境で過ごしたという。

北朝鮮で旅行や移動のためには、「旅行証明書」が必要だが、当局は17歳未満、65歳以上の住民には証明書がなくても鉄道への乗車を認めたことから、多くの人が先を争って疎開したと見られる

両江道(リャンガンド)のRFAの情報筋も、恵山(へサン)駅に到着した平壌発の列車に数百人の乗っていたことや、両江道の労働党委員会幹部が自分の子供を密かに農村に疎開させたという話が広がり、不安感を高めたと伝える。

恵山では10月10日の労働党創建70周年記念事業として「金日成ファミリー」の銅像建設が行われているが、現場の労働者の間で「本当に戦争が起きるかもしれない」という噂が広がって、本来なら午後9時まで行われる工事が、5時には労働者がいなくなり中断されたという。

両江道の住民によると、「10軍団本部など攻撃の対象になりうる施設の近隣に住む住民は、留守番一人を残して、家族全員が郊外に疎開した。爆弾が一つでも落ちたら中国に避難するつもりだった」と語っていたという。

こうした不安心理が広がりやすい背景には、北朝鮮にまともな報道機関がなく、口コミで玉石混交の情報があっという間に広がるからだ。

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