北朝鮮は、脱北の防止に全力を挙げている。国境警備を強化するだけでは飽きたらず、鉄条網に加えて落とし穴まで掘ったが、当局の措置をあざ笑うかのように脱北が相次いでいる。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、今月9日、中朝国境に面した茂山(ムサン)で2家族8人が集団で脱北する事件が起きた。「労働党創建70周年を控えての100日戦闘期間には些細な事件も発生させるな」という金正恩氏の指示が下されてわずか1か月後で起きた集団脱北で、国境警備隊は大騒ぎとなった。

治安当局は、事件を「重大事案」と見て、中国の公安当局に協力を要請。大々的な捜査を行っているが、今のところ脱北者の逮捕には至っていない。

一方、事件を聞いた金正恩氏は「茂山一帯の河原を鉄条網で完全封鎖せよ」という指示を下すだけでなく、国境警備隊は夏季訓練の終了を早め、鉄条網の設置作業に乗り出した。また、軍関連の工場は、他の仕事そっちのけで、セメント、鉄鋼など鉄条網用の資材製造に全力を上げている。

しかし、現場では「2家族が同時に脱北したところを見ると目的地はおそらく韓国」「特別警戒期間の今、捕まれば重罪は免れないので、危険な中国には長居せず、とっくに韓国に着いているだろう」との見方が広がり、あきらめムードが漂っているという。

当局が、住民の脱北に戦々恐々とするなか、さらなる脱北が発生した。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、同じ茂山で16日に一家5人が脱北する事件が発生した。軍当局は、国境警備隊の幹部が関与していると見て捜査に乗り出したが、住民たちは「今更騒いでも後の祭り」だと鼻で笑っているという。

両江道(リャンガンド)の恵山(へサン)では11日、3家族12人が脱北する事件が発生したが、運悪く逮捕されてしまった。彼らの処遇は明らかになっていないが、恵山市民の間では、「すでに政治犯収容所に送られたのではないか」という噂が出回っている。

RFAの情報筋は「最近、家族単位での脱北が増えている。個人での脱北まで含めると数えきれないほど多い」と、国境警備の強化はあまり意味をなしていないと伝えた。

個人の脱北行為の多くは、韓国や第三国への亡命が目的ではなく、市場で売る品物を仕入れるための密輸目的だと言われている。国境警備の強化で密輸が困難となり、市場での一部商品の値上がりが伝えられたこともあったが、物価が概ね安定しているところを見ると、安全で安定した密輸ルートが確保できたとの見方もある。

 

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