父親に本国からの帰国命令が出ても、子どもは「あんな国に帰りたくない」と駄々をこねる。ようやく説得して連れ帰っても親は安心できない。
友達に「外国はいい」などと言ったことがバレたら、保衛部に呼び出しを食らい数ヶ月に及ぶ取り調べを受けて外交官をクビになったり、家族全員が教化所(刑務所)送りになったりするからだ。見せしめで処刑されるおそれすらある。
それを恐れた親は、精神病院にワイロを払って子どもを入院させてしまうのだ。精神病院の中ではいくら「外国はいい」と言っても、「この子は病気だから」の一言で見逃されるからだ。
粛清、処刑が相次ぎ「明日は我が身」と恐怖に震えている幹部たちは、自分と家族を守るために、わが子をも犠牲にせざるを得ない境遇に追い込まれているのだ。