かつて北朝鮮では、安定した生活を手に入れるために朝鮮労働党の党員になることが必須だった。党員になるためには、ワイロを積んだり、時には性的な要求に応じたりしていたが、その価値も今ではすっかり下がったようだ。

平安南道のデイリーNK内部情報筋は、その理由を「商売が自由にできないから」と説明する。北朝鮮の一般住民は、形式上、どこからの機関や企業所(会社)に所属しているが、職場に出勤していたら商売が出来ない。そのため、ワイロを払って無断欠勤を黙認してもらうが、党員の場合はその額が数倍となる。

また、商売という「非社会主義的行為」に関連して摘発でもされたら、一般人より処罰は重い。さらに党から除名処分を受けようものなら、教化所(刑務所)出所者より監視される対象となる。

こうした事情から、「使えない」存在となった労働党に入ろうとする人は急減。入党に必要なワイロ額も、かつての数百ドルからウサギ1匹にまで暴落した。庶民たちは「高級幹部になれないのだったら絶対に入党するな」「犬も喰わない党員証」などと入党する人々を鼻で笑っている。

一方、入党希望者の激減で頭を抱えているのは、党書記(工場・企業所や各種の機関内にある労働党支部のトップ)たちだ。入党希望者の減少は「将来の子分」の減少だからだ。党員の威信もすっかり暴落した今では、党書記自らが「トンム(“君”のようなニュアンス)も入党しないかい?」と勧誘して回る有様だという。

さらに、党書記は「副収入」を増やすために、商売で儲かっている党員を訪ねて「忙しくて党費を払いに行く暇もないだろう。私が立て替えておいたから『党費総和(総括)』をしたまえ」と露骨にワイロを要求するようになった。

平壌における労働党員の地位低下はさらに深刻だ。

トンジュ(金主、新興富裕層)たちは、よほどの高級幹部でなければ「党員とは結婚するな」と子供に言い聞かせるという。「労働党員は、商売ができず貧乏だから」という理由だ。

中国共産党は、2000年に当時の江沢民総書記が提示した「3つの代表論」に従い、資本家の入党を認めるようになった。かつては農民、労働者の党だった中国共産党が、脱階級政党、エリート集団の政党へと変貌した。朝鮮労働党にそのような日は果たして来るのだろうか。

    関連記事