北朝鮮で「栄誉軍人」と呼ばれる傷痍軍人。発電所、道路、アパート建設に動員されて、事故で障害を持った軍人のことだ。この傷痍軍人が「半グレ化」していると米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えている。

傍若無人な振る舞い

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の内部情報筋によると、傷痍軍人たちは清津(チョンジン)市内の各市場を闊歩しながら、様々な嫌がらせや暴力を繰り返しながら住民たちに嫌がらせを繰り返している。

こうした傷痍軍人たちは、5人から7人で1組で「松葉杖組」と呼ばれる。

「松葉杖組」は、朝早くから市場の入口に立ち、通りがかった人にガムやキャンディを10倍の値段で売りつける。その後は、市場の隅々を周り、同じようにガムやキャンディを押し売りして回る。買おうとしない人を松葉杖で殴りつけたり、店の商品をひっくり返したりするなど、その傍若無人ぶりで住民たちから恐れられている。

本来なら社会的地位が高く、様々な優遇策の恩恵を受けるはずの傷痍軍人たちが、なぜそんなことをするのだろうか。

社会的に疎外

咸鏡北道の別の内部情報筋によると、金日成時代には軍勤務中に事故で怪我をした傷痍軍人たちに対して、様々な優遇策が与えられていたが、金正日時代に入ってから、冷や飯を食わされるようになってしまった。

国家の財政が悪化するなか、大規模建設の増加で傷痍軍人の数が急増。さらに、90年代の大飢饉「苦難の行軍」によって国が彼らの面倒を見る余裕がなくなった。その結果、彼らは社会的に疎外される存在に落ちぶれてしまったのだ。

とはいえ、傷痍軍人たちの社会的地位の高さだけは残っているため、厄介な存在になっている。

「国家にも責任が…」

問題を起こした傷痍軍人を保安員(警察官)が諌めようとしても「捕まえるもんなら捕まえてみろ!」と悪態をつき、保安員を困らせる。

市場管理員も彼らの姿を見るとどこかに逃げてしまい、結局は商人がいくばくかのお金を掴ませてなだめているという「やりたい放題」だ。

こうした状況に対処するため、金正恩氏は去年の8月10日に「栄誉軍人の間で発生している社会的犯罪を厳格に取り締まることについて」という指示を下したが、「あまり効果はない」とRFAの情報筋は語る。

さらに「松葉杖組」を生み出した責任は「国家にもある」と指摘しながら一定の同情を示した。

平壌の地下鉄にある傷痍軍人用の優先席
平壌の地下鉄にある傷痍軍人用の優先席

「国があの人たちをほったらかしにしているからこういうことになる。彼らを責め立てるのではなく、社会の関心と彼らを支えるシステムが必要だ」

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