金正恩氏の再側近である崔龍海(チェ・リョンへ)氏が処刑直前まで追い込まれていたという説がある。韓国の東亜日報が、北朝鮮の金正恩政権に非常に近いところにいた元高級幹部の証言として報道した。

極めて興味深い内容であり、デイリーNKジャパンの解説を入れ込みながら要約を紹介する。(太字が証言の要約)

元最高幹部の証言によると、「崔龍海氏は昨年4月末、1ヶ月以上監禁されていたが、事の発端は張成沢氏の粛清・処刑から始まった」と語る。

「張成沢は、幹部からの信頼が厚く、北朝鮮住民からは金日成一族、いわゆる北朝鮮ロイヤファミリーの一人と見られていた。これに対して金正恩氏は、自分より人望の厚い人物がそばにいることを恐れていた」

おそらく張成沢はナンバー2として金正恩体制を支えるつもりだったと見られる。しかし、自己顕示欲が強い金正恩氏としては「なぜ、最高指導者の自分より、ナンバー2が信頼があって人望があるのか」と張成沢氏に対して複雑なコンプレックスを抱いたことは充分にあり得る。

「帝王学を学ばないまま最高指導者になった金正恩氏は、当初は、張成沢に頼らざるをえなかったが、自分を見て歓呼する北朝鮮住民の姿を見て、根拠のない自信をもちはじめた」

「さらに、金正恩氏と張成沢は経済路線をめぐって対立。金正恩氏は成果を急いで、派手な大型建設工事に莫大な投資を行ったが、張成沢が途中から『経済発展のために経済特区など拡大再生産が可能な分野に投資すべきだ』と進言した」

両者の対立が深まるなか、張成沢に積年の恨みをもっていた組織指導部が便乗して、金正恩に荷担し、張成沢を粛清・処刑に追い込んだと見られる。

「張成沢処刑の余波は、崔龍海にも及び処刑直前まで追い込まれた。一部では、崔龍海が張成沢の処刑に追い込んだという説があるが、二人は非常に仲が良かった」

「金正恩氏は、崔龍海を処刑する口実を探すために、彼がトップの総政治局所属の行政課長の些細なミスを見つけ出し、翌日幹部たちを同席させた上で高射砲で銃殺した。その次に、崔龍海氏を処刑しようとしたが、なんからの理由で生かしておき、勤労団体の秘書に降級させるだけに留めた」

崔龍海が、なぜ粛清を逃れたのかは不明だが、いずれ事実は明るみにでるかもしれない。崔龍海は、粛清を免れたが、この高官は「張成沢処刑以後、権力内の人材が枯渇している」と証言する。

「張成沢の周辺には北朝鮮のすべての優秀な人材が集まっていた。しかし、彼と同時に粛清されたため、人材不足に陥り、優秀な人材がいない。金正恩氏に下手に提案や進言すると目を付けられて処刑されかねないからだ。誰も責任が問われる仕事を避けようとする」

金正恩体制は、経済を立て直すために、一度失脚した朴奉珠(パク・ポンジュ)を内閣総理に登用した。これは、張成沢の妻で、張氏が処刑されて以後、表舞台から姿を消した金慶喜(キム・ギョンヒ)氏が、お膳立てしたと言われている。その朴奉珠ですら、粛清を恐れていると高官は証言した。

「朴奉珠は、責任を問われることを恐れて書類に署名をしようとしない。もう、金正恩氏に意見する人は誰もいなくなった。こんな状態が続けば、金正恩政権はどうなるか言うまでもない」

「玄永哲(ヒョン・ヨンチョル)氏も、こうした金正恩氏の恐怖政治の犠牲になった。張成沢氏の処刑後、金正恩氏は『どんな些細なことでも報告せよ』という指示を下している。監視の目が厳しくなり、幼稚園児に対しても『家で両親がどんな話をしているか、どんな映画を見ているのか』と逐一報告させている」

こうしたなか、北朝鮮で「最もおいしい職業」だったはずの保衛部(秘密警察)ですら、人手不足に悩まされている。地方の職員は定員の半分ぐらいだ。『人殺し』に加担していて、万が一金正恩体制が崩壊すれば、自分の命も危なくなるからだ。

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