北朝鮮では、朝鮮戦争を「祖国解放戦争」と言う。米国と韓国が先に仕掛けた侵略戦争であり、自衛のための戦争という主張だ。これは「抗日パルチザンの伝統」と共に、北朝鮮の国家的アイデンティティーの柱でもある。

戦争自体は不可避だったとはいえ、北朝鮮が先に南側を攻撃したのは歴史的事実だが、北朝鮮通史では絶対にその事実を認めない。

しかし、最近では、北朝鮮住民の間でも「北朝鮮から仕掛けた」という認識が拡散しつつある。

平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋によると、「朝鮮戦争は北朝鮮が韓国を先に攻撃した」という認識を持つ住民たちが増えている。

北朝鮮では、朝鮮戦争が勃発(6月25日)した6月は「反米闘争月間」だ。北朝鮮が言うところの「米帝の侵略者根性」を宣伝することで政権への忠誠心を高めるために行われる。

街中に、「反米」のスローガンが掲げられ、学校や女性同盟では「詩の朗読」「階級教養館見学」「復讐の決議の会」「戦争映画鑑賞」などの行事が開かれた。また、北朝鮮のメディアは普段にもまして「朝鮮戦争は米帝と南朝鮮の引き起こした侵略戦争」だと騒ぎ立てる。

しかし、この当局のプロパガンダが、逆に住民たちの不満を高めてしまっているようだ。

金正恩政権への不満が高まる中、「先に攻撃したのはうちら(北朝鮮)だろ?」「あんなのウソだよ」など、政権への不満と絡めて当局のプロパガンダを批判する人々がここ数年で増えている。

特に軍隊経験のある男性たちは「米帝と南朝鮮が北朝鮮を侵略したが、それを跳ね返して朝鮮人民軍が南朝鮮のほぼすべてを数日で占領したというのは軍事的にありえない」との認識を持っているという。

また、不倶戴天の敵である米国から送られたコメ、医療支援を受け取るのはダブルスタンダードだとの批判も上がっているという。

さらに若者の間では「先に攻撃を仕掛けたのに(武力による統一という)目標を達成できなかった北朝鮮は敗戦国同然」だと、朝鮮戦争は北朝鮮の大勝利と宣伝する当局のやり方を批判する。

韓流を通じて「真実」を知ってしまった北朝鮮の人々。当局のプロパガンダはもはや通じないのかもしれない。

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