医者に支えてもらってよろよろと歩き、服を着てから204号病室に行った。手術室の床に流れた血のにおいをかいだら頭がくらくらとして、吐き気に襲われた。
どうやって2階の病室まで行ったのか、今もよく思い出せない。母の泣き声で目を覚ますと、病室に横たわっていた。痛みは朝7時にようやくおさまった。
先生が思いやってくれて、一週間後に抜かなければならない糸を10日後に抜いてもらった。糸を抜いて拘留場に戻った日、保安署の正門前に見送りに来た友達と町内の人ひとりひとりと握手をして、私は鉄門の中に入って行った。
涙を見せないようにぐっとこらえて後ろを振り返ると、お母さんが地べたに座りこんで、両手で口をおさえたまま嗚咽していた。私は必死で笑顔を作って、母に向かって手を振った。