家々から立ち上るかまどの煙を見て「高き屋に のぼりて見れば煙立つ 民のかまどは賑わいにけり」と短歌を読んだのは仁徳天皇(399年没)だ。北朝鮮の庶民たちは、火力発電所の「煙」を見て「もしかしたら、経済発展するかも?」と漠然とした期待を抱く。

ところが、「煙」が最近になって止まってしまい、市民たちの間に失望感が広まっていると米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝える。

北朝鮮の清津港/写真:韓国平和問題研究所
北朝鮮の清津港/写真:韓国平和問題研究所

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の電力部門関係者がRFAに伝えたところによると、稼働が止まったのは咸鏡北道(ハムギョンブクト)の清津(チョンジン)火力発電所だ。

金正日体制末期から稼働が止まっていたが、2012年から再稼働。昨年からはフル稼働に入っていた。昨年の春は雨が少なく、水力発電所が充分に稼働できず、不足した電気を補う目的だった。さらに、規制強化で中国輸出が難しくなった石炭を内需用に割り当てたためだ。

しかし、今度は、電力不足と炭鉱設備の老朽化で、燃料源となる石炭の採掘が減少。また火力発電所の老朽化のため稼働が止まってしまった。

情報筋によると、清津市民たちは「90年代後半の「苦難の行軍」の時期にも煙突の煙を絶やさなかったのに…」と激しく落胆している。

清津火力発電機は、5万キロワット級の発電機が3台設置されている。水力発電が難しくなる冬季に、金策製鉄所の鋼鉄生産のために、夏季は水力発電所の故障に備えて、フル稼働ではなくても稼働していた。

電力難に苦しんでいる清津市民たちは、発電機の煙を見るたびに経済回復の期待に胸を膨らませていた。

「清津火力発電所の煙は清津市民たちに、金正恩政権が経済回復のために努力していると『ぬか喜び』させただけ。経済政策への期待は煙と共に消えてしまった」(咸鏡北道の内部情報筋)

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