【記事本文】福知山線事故から10年「惨事」は予測されていた…JR内部文書「重大な事態につながる恐れ」

「責任事故の名称の一部変更」の考え方について

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当社の事故防止対策の中で、特に重点を置かなければならないのは、お客様に死傷を及ぼすような重大な事故の防止である。

事故を防止するためには、それが発生する前に予見し、対策を講じておくことが理想であるが、現実には的確に予見することは難しい。しかし、幸いなことに、ほとんどの場合、重大な事故が起こる前には必ずその発生をを予測させるに足る小さな事故が発生するといわれている。したがって、いかに小さな事故にみえても、それに関する正確な事実をつかみ、その情報を関係者間で共有し、どうしたら重大な事故に至らせないで済むかを幅広く考え、対策を講じていくことが事故防止への王道といえる。また、このためにこそ「事故の正しい把握」が大切である。

すなわち、現在「責任事故」と呼んでいる人的要素を含んだ事故に限定していうと、事故を正しく把握したうえで「誰がどういうミスを犯したか。」だけでなく、「なぜミスを犯したのか。」を幅広く究明することが重要であり、「本人の意識、知識、技量」、「バックアップ設備」、「仕事の仕組み」等あらゆる角度からの分析が必要である。また、原因究明の深さについても、例えば「知識、技量の不足」という段階で終わってはならず、なぜその不足が生じたのか、教育・訓練に問題はないかなど二次原因、三次原因までさかのぼって本質的な事故原因に到達しなければならない。

これらの原因究明はバランスよく行われなければならないのであって、もしも事故が起これば責任の所在は明らかにしなければならないが、これを起こした当人の問題のみが強調され過ぎれば、社員の関心が「重大事故の防止」より「責任事故の防止」に集中することになりかねず、軽微な事故を起こした際でも、自己の責任となることを回避しようとして新たな事故を引き起こしたり、事故の隠ぺいを図ろうとするなど、より重大な事態につながる恐れも考えられる。現在まで、事故防止指導を行う立場にあるものは、考えられるあらゆる方法により事故防止に懸命の努力を払ってきたところであるが、更に一歩高いレベルの事故防止を目指すためには、どうしても「本来、人間はミスをすることがある。」という冷静な事実をより明確に認識した上での取り組みを行うことが必要となる。

以上の観点から「責任事故の名称の一部変更」を行うこととした。具体的には「鉄道運転事故となったもの」、「死傷者を生じたもの」、「原因が悪質なもの」、「多大の列車影響や損害を生じたもの」等については従来どおり「責任事故」とするが、その他については「反省事故」とし、程度に応じて「反省事故?」、「反省事故?」に分類する。