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金日成氏の生誕記念日「太陽節(4月15日)」が過ぎた。この日を前にすると北朝鮮の貿易関係者は、幹部たちへの賄賂の準備で大忙しになる。

丹東の高級大型ショッピングモール、ワンダープラザ。テナントには韓国系のロッテマートが入っている。
丹東の高級大型ショッピングモール、ワンダープラザ。テナントには韓国系のロッテマートが入っている。

下着、家電、洋酒、果物など多岐にわたる賄賂アイテム

まず、一般的な賄賂とは性格が少し違うが、絶対に欠かせないのは金日成氏の銅像に捧げる花輪と花束。これを怠ればいくら貿易の成績がよくても思想的に問題があるとされてしまい、帰国命令が出かねない。

それが確保できたら今度は関係各所の幹部に贈る賄賂用の商品の確保に奔走する。中国丹東の情報筋に最近の人気商品について聞いてみた。

「最近よく売れているのは韓国製のアンダーウェアやカミソリですかね。冷蔵庫、洗濯機、エアコンも人気です。韓国製の化粧品は幹部の妻にあげると覚えが良くなります。高級幹部向け賄賂で人気なのはヘネシーコニャックと中国南部で取れるトロピカルフルーツがいいですね。北朝鮮では最高級品扱いなので多少高くても皆さん買って行かれますよ」

「免税は洋酒1本までなんですけど、税関の職員に賄賂を掴ませておけば問題ないですよ。皆さん、大きなコンテナに洋酒を何箱も入れて持ち込まれてますからね」

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ここまで皆が必死になるのは、賄賂が人事査定を左右するからだ。幹部に気に入ってもらえるものを贈っておメガネに叶えば今後1年は楽に商売できる。それは自分の財産を増やすことにもつながる。

日本のお中元、お歳暮的感覚

様々な事情で北朝鮮に一時帰国しない貿易関係者ももちろんいる。帰国しないからといって太陽節をのんびり過ごせるわけではない。太陽節関連の様々な祝賀行事があるからだ。

駐瀋陽北朝鮮領事館の指示に従って行事会場に花を届けて場を華やかに飾り立てることで評価も上がる。もちろん領事館の幹部たちに賄賂を贈ることも忘れてはいけない。

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毎週行われる生活総和(総括)にまじめに参加していなかった人にとっても太陽節は名誉挽回のいいチャンスになる。党組織の責任者に賄賂を渡して生活に問題がないというニセの評価書を書いてもらうのだ。

北朝鮮の話ではあるが、あまり他人事のように感じられない向きもいるかもしれない。日本でも1900年代ごろまでは取引先、監督官庁、自社の上司にお中元、お歳暮を贈るのが当たり前だったからだ。それなりの地位にいる人の家の玄関には大量の贈り物が積み上げられている光景がよく見られた。

個人情報保護やコンプライアンス順守が叫ばれるようになり、企業社会でのお中元、お歳暮の習慣もほとんど消えてしまった。いささかやり過ぎ感はあれども、「賄賂」と呼ぶからおどろおどろしく感じるだけで、日本も北朝鮮もどこか似たようなことをやっているのだ。