休憩する軍人 ©Roman Harak
休憩する朝鮮人民軍の兵士(本文とは関係ありません) ©Roman Harak

昨年末に中朝国境地帯の中国側で発生した朝鮮人民軍兵士による強盗殺人事件をめぐり、北朝鮮側が賠償金を提示したものの中国人遺族が受け取りを拒否。納得できない遺族たちが、中国の政府機関への訴えを続けていると中国の鳳凰網が報道した。

遺族「賠償金の額に不満」

事件が起きたのは、中国吉林省にある延辺朝鮮族自治州和龍市。昨年12月27日、朝鮮族のお年寄り許さん夫妻と李さん夫妻の住む家に脱北した朝鮮人民軍の兵士が押し入り、4人を殺害して金や食べ物を奪った。

殺害された許さんと李さんにはそれぞれ2人、3人の子どもがいて全員が韓国で働いているが、賠償金の額など地方政府の処理方法に不満を持ち、韓国での仕事をやめて帰国。地方政府と中央政府の信訪局に訴え続けている。「信訪」とは中国独自の制度で、国民が国や公務員の違法行為や職務怠慢などに被害を受けた場合に訴え出るところだ。

遺族の一人、許善姫さんは鳳凰網の取材に対して「遺族全員が同じ村の幼なじみだ。事件の知らせを聞いて急遽帰国して葬儀を行うと同時に、政府と交渉を始めた。政府から納得できる回答がなければ韓国に戻ることは考えられない」と語った。

北朝鮮の提示額は1世帯3000米ドル

一方、北朝鮮側は和龍市にある中国辺境防衛隊を通じて遺族に1世帯ごと3000米ドルで賠償金を支払おうとしたが、受け取りを拒否された。

許さんは、「4人が殺されたのに6000ドル?絶対に受け入れられない」と語っている。

家族の訴えに対し、中国の地方政府は何もできずにいる。中国には刑事事件の被害者に対する国家賠償制度がないからだ。今年に入ってから和龍市政府の張副市長が1世帯あたり1万元の見舞金を手渡したが、遺族は雀の涙だと訴えている。

遺族たちは上部機関の延辺朝鮮族自治州信訪局を訪ねたが、金杰局長はこの件に関して「政府には一切の責任がない、弁護士に相談すればいい」との対応だったと許さんは説明している。

中朝国境の中国側では、北朝鮮の朝鮮人民軍兵士が脱走して逃げ込んだり強盗事件を起こすケースが後を絶たない。先月にも遼寧省丹東市に脱北兵士2人が逃げ込み、銃撃戦の末1人が逮捕される事件が起きている。

これらの事件は中国メディアでも大きく報道されており、中国の環球時報は1月6日、朝鮮人民軍兵士による事件で中国国内の反北朝鮮感情が高まっていると報じている。