北朝鮮の小学校教育で金正恩氏の幼年期の偶像化教育がはじまっていると米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。しかし、教科書などには盛り込まれていないとのことだ。
偶像化のための「革命活動」教育
北朝鮮の教育制度では、幼稚園から大学に至るまで金父子(金日成氏、正日氏)「革命活動」について徹底した教育が行われている。
小学校では2人の幼年期を中心に教えられ、初級中学校から高級中学校(日本の中学校、高校に相当)では2人のその後の生涯について教えられる。そして、大学では「革命史」として教育される。
労働党や政府の幹部を登用するうえにおいて最も重要視されるのが大学での「革命史」の成績だ。
5点満点で3点以下だと、他の成績が優秀でも幹部として登用されない。金父子の生涯と革命史は、北朝鮮の思想教育の柱と言っても過言ではない。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面しかし、金正恩氏の偶像化教育は、これまで行われていなかった。
大学、小学校で部分的に開始
正恩氏の偶像化教育についてRFAの複数の情報筋は、次のように語っている。
「昨年から、各大学で“金正恩氏の革命史”を部分的に教えはじめている。小学校でも今年から教育が始まった」(両江道の情報筋)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面「大学や軍事学校でも教材なしに金正恩氏の革命史が教えられている。中央から下された教育資料を元に教育が行われている」(咸鏡北道の情報筋)
ただし、「金正恩氏の革命史」は体系化されておらず、一貫した論理性もないと情報筋は指摘した。教育の中心は正恩氏個人の能力を強調する内容や、周囲の人物が彼を評価する回想録が中心とのことだ。
「金正恩氏の生年月日、故郷、出身成分などの出自に関しては、一切秘密だ。公式の教科書で明らかにするほど、彼の経歴が美化、体系化されていないからだ」(情報筋)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面金父子の偶像化では、「母(オモニ)の伝説」に重点が置かれていたが、正恩氏の母は、大阪生まれの在日朝鮮人で、1960年代前半に北朝鮮に渡った高ヨンヒ氏だ。
資本主義の空気を知る在日朝鮮人帰国者は、北朝鮮の体制から潜在的な敵対分子とみなされ「出身成分」と呼ばれる社会階層の下位に置かれている。
ちなみに、出身成分の頂点に君臨するのはもちろん、金日成ー正日ー正恩と続いてきた「白頭の血統」だ。北朝鮮の偶像化教育は、この血統の絶対化が目的とも言える。
だからこそ、出身成分のよくない高ヨンヒ氏が母親であるというのは北朝鮮にとって「不都合な真実」であり、正恩氏の偶像化教育においてネックになっていると見られる。