3月10日に渋谷区内で配布された同性パートナーシップ制度に反対する内容のチラシ
3月10日に渋谷区内で配布された同性パートナーシップ制度に反対する内容のチラシ

自民、公明、民主の国会議員らが17日、超党派の「LGBT(同性愛者などの性的マイノリティ)に関する課題を考える議員連盟」を発足させた。

国会内で開かれた初会合には29人が参加。議長の馳浩衆議院議員(自民党)は「社会生活上どういった課題があるかを浮き彫りにしたい」と語った。

この動きの背景には、渋谷区の「同性パートナーシップ制度」導入をめぐる議論と、2020年開催予定の東京オリンピックがある。

国際オリンピック委員会(IOC)は昨年9月、今後の五輪開催都市との契約に差別禁止義務を含めると発表するなど、少数者の権利侵害に対して非常に厳しい姿勢を取っている。同性愛宣伝禁止法をソチ五輪開催の前に成立させたロシアは欧米主要各国の首脳に開会式を事実上ボイコットされ、面子が丸つぶれとなった。

日本でも最近、自民党の柴山昌彦衆議院議員がテレビ番組で「同性婚を認めれば社会が混乱する」などと発言して批判を浴びたばかり。「この問題で対応を誤れば日本もロシアと同じ状況に陥りかねない」という危機感が、今回の議連立ち上げにつながったと言える。

LGBTの運動関係者の男性は、「保守派の中には柴山議員と同様の主張を持つ政治家も少なくないが、公正な考え方のできる議員が声を上げ始めたことには期待が持てる」と話す。

ところがここへきて、予期せぬ事態が頭をもたげている。韓国系の宗教団体信者らが、渋谷区の制度導入をつぶすべく介入を始めたのだ。

渋谷駅ハチ公前で開かれた頑張れ日本の反同性愛街宣に反対する人々
渋谷駅ハチ公前で開かれた反同性愛街宣とそれに反対する人々(読者提供)

3月10日、渋谷区役所前と渋谷駅ハチ公前で行われた、同性パートナーシップ制度に反対する街宣活動。主催したのは、少なくないメンバーが在特会とかぶっているとされる右派団体「頑張れ日本!全国行動委員会」である。

もっとも街宣の目撃者によれば、「彼らの言い分は『(パートナーシップ制度は)日本解体の条例だ』『逆に差別を煽る』『お前らは反日左翼だろ』『条例が通ったら男が女を愛する時という曲が歌えなくなる』などと理屈にすらなっていませんでした。普通の人々が耳を貸すとは思えない」と言う。

宗教保守が猛威振るう韓国

問題は、この街宣で彼らと行動を共にし、同性愛に対する偏見に満ちたビラを配布していた「家庭を守る渋谷の会」(以下、渋谷の会)なる団体の方だ。

渋谷の会は最近、渋谷区内の一般家庭に同性パートナーシップ制度導入に反対するビラをポスティング。また、ネット署名サイトのChange.orgで同制度に反対する署名を募っており、19日18時現在、約4400人の署名が集まっている。

そして、このウェブ署名の案内が韓国発祥の宗教団体・統一教会信者の合同ニュースブログFamily forum.jpに掲載されていることから、「同会の正体は統一教会ではないか」との指摘が出てきているのだ。

「渋谷の会と統一教会が一体であるかどうか、確かなことはわかりません。しかし統一教会系のメディアには渋谷区の動きを批判する記事が多数掲載されており、組織として反対しているのは間違いないでしょう」(前出・運動関係者の男性)

彼ら反対派の主張は、「同性婚によって社会が乱れる」「家族が崩壊する」「少子化が進む」など、欧米諸国では論駁されて久しいものだ。普通に考えれば、そうした陳腐な主張が社会で大勢を占めることはないようにも思える。

しかし現実には、性的マイノリティの人権回復を求める人々がいくら客観的な主張を行っても、「実力」によって抑えつけられてしまう状況も存在する。その最たる例が、統一教会など宗教保守勢力が猛威をふるう韓国社会の現状なのだ。

大邱クィアパレードを妨害するプロテスタント保守団体の会員
大邱クィアパレードを妨害するプロテスタント保守団体の会員。プラカードには「ヘイトではありません。同性愛よりもっと大きい真の愛があります」「同性愛は罪です!イエス様のところに来れば治ります」と書かれている。

韓国の同性婚をめぐる議論

ギャロップコリア社が2013年4月に実施した世論調査では、同性婚に賛成する人(25%)を反対する人(67%)が大きく上回っていた。しかし30代では賛成40%に対し反対53%、19歳から29歳では賛成52%に対し反対38%と、年齢が下がるにつれ賛成の割合が増える傾向にある。

次に宗教別では、賛成が最も多いのがカトリックの34%、次いで信仰なしが31%。

一方、プロテスタントは17%、仏教は15%と賛成する人が非常に少ない。

このように反対世論が強い中でも、映画監督のキムジョ・グァンス氏が2013年9月に同性パートナーと婚姻届を提出するパフォーマンスを行うなど、性的マイノリティの権利回復運動は広がりを見せているのだが、他方では行政当局が、同性婚に賛成するグループと反対するグループの板挟みになる事例が相次いでいる。

リベラル派として知られるソウル市の朴元淳(パク・ウォンスン)市長は昨年10月、米サンフランシスコ・エクザミナー紙とのインタビューで「韓国が同性婚を認めるアジアで初めての国になることを望む」と発言した。

これに対し、宗教保守勢力が猛反発。

パク市長は釈明に追われ、公の場でインタビューでの発言を撤回させられてしまう。さらにプロテスタント保守団体である韓国長老教総連合会メンバーとの懇談会では「同性婚を支持しない」とまで明言した。

すると今度は、性的マイノリティの当事者たちや左派、リベラル派の怒りが爆発。ソウル市庁舎で連日連夜の座り込み抗議を行う事態に発展した。パク市長は改めて、「同性婚を支持しない」との発言を撤回し謝罪。しかし一連の騒動によるダメージは大きく、「次の大統領になってほしい人・1位」の座を野党・新政治民主連合の文在寅(ムン・ジェイン)代表に明け渡す結果となった。

また、今年6月13日に開催される「ソウル・クィア・パレード」(コリア・クィア・カルチュラル・フェスティバル)は当初、ソウル市庁前広場を会場として予定していたが、現在に至るも使用できるかどうかわからない状況だ。ソウル市の担当者が言い訳を重ね、開催許可を出そうとしないのである。

どうやら、昨年のソウルと大邱(テグ)でのパレードで参加者と宗教保守勢力ら合わせて数百人が対峙し、収拾のために戦闘警察(機動隊)が乗り出す事態となったことが背景にあると思われる。

ソウルクィアパレードを妨害するプロテスタント保守団体の会員。首謀者が連行されている。(読者提供)
ソウルクィアパレードを妨害するプロテスタント保守団体の会員。首謀者が連行されている。(読者提供)

それにしても何故、統一教会の信者らは日本においてまで「同性婚つぶし」に血道を上げているのか。統一教会ウォッチャーが言う。

「統一教会は韓国発祥の宗教団体ですが、日本における信者は大多数が日本人です。彼らは彼らなりの考えで動いているのでしょうが、問題はどのような形で同性婚反対を唱えるかです。韓国でのように、社会に混乱を起こすのはやめてもらいたいですね。また統一教会は、やはり同性婚に反対している日本の保守政界と密接につながっている。選挙などを通じて両者の思惑が重なるようなことになれば、性的マイノリティにとっては厄介な事態になるかもしれません」

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【コラム】憲法にも民法にも同性婚禁止条項のない韓国

日本国憲法第24条には「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立」するという条文がある。これを根拠に同性婚は憲法違反だと主張する者もいる。一方、韓国の憲法や民法には結婚の定義に関する規定がない。同性婚を禁止する条項も処罰する条項も存在しない。同性カップルの婚姻届を行政当局が受理しないのは行政令ですらなくあくまでも慣習に過ぎない。

同性パートナーとの婚姻届をソウル市西大門区役所に出したが受理を拒否された映画監督のキムジョ・グァンス氏は区役所を相手取って行政訴訟を起こした。区役所側は「法律がないから受理できない」という姿勢を示している。

2月26日に韓国の憲法裁判所は姦通罪が違憲であるとの判決を下した。この判決の核心となる論拠は性の自己決定権だ。憲法裁判所関係者は週刊京郷の取材に対して「裁判所が性の自己決定権を幅広く認めており、性と関連する他の事件にも影響があるだろう」と答えている。

性の自己決定権は性関係の有無や、パートナーの決定における自由を指す言葉だ。今回の判決では結婚をしている状態であっても姦通する自由は基本権に属し、国家が侵害してはならないということが示されたことになる。

この判決は現在審理中の「性売買処罰法」の憲法判断にも影響が出ると予想されている。もし性売買処罰法に対して違憲判決が出た場合、同性婚にも影響があると言われている。

同性婚が実現するには国会での立法を経なければならず、保守派が多数を占める国会では困難が予想されるが、プロテスタント保守団体の激しい反対にもかかわらず韓国の同性婚成立は徐々に現実味を帯びつつある。

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