S社は取材に応じなかったものの、取引先の中に複数の北朝鮮企業があるのは海運関係のデータベースからも確認できた。また、同社が入居するオフィスビルの管理人によれば、「たしかに、このビルには東洋人が出入りしている。朝鮮人だと聞いたことがある」と話した。
呉明根の任務とは具体的にどのようなものだったのか。脱北した北朝鮮の元当局者が明かす。
「金正日が必要とするすべてのものを調達するのが呉明根の任務です。いわゆる喜び組で知られる秘密パーティーをはじめ、金正日が参加する行事に必要ないっさいのモノ、金正日と家族のための食品、日用品、ペット、スポーツ器具から、彼のボディガードの装備にいたるまで、本国からの要求をもとに呉明根が品物を吟味し、購入するのです。もちろん、すべてが最高級品でなければなりません」
とくに金正日の誕生日(2月16日)や金日成の誕生日(4月15日)直前の数週間、ローマにある北朝鮮大使館は、呉明根の指揮下に贈り物の購入、梱包、発送の作業に追われ、上を下への大騒ぎになったという。
韓国情報機関の極秘レポート
こうした一連の取材は、ある極秘文書を手掛かりとすることで可能になった。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面韓国の国家情報院の付帯研究機関で作成されたもので、ハングル版31ページ。スイス・ベルンの銀行に眠る秘密資金の実態報告書である。