大使館がないということは当然、日本の外交官が平壌に常駐することはできない。となれば、朝鮮語を専門とした外交官の勤務地は韓国くらいなもので、「専門家」が生まれにくいのが現状なのだ。
「外交官たちは、外務省に入省後、語学留学のために諸外国へと渡航していきます。そして帰国後は、その留学先毎に『スクール』と呼ばれる派閥を形成していくのですが……当然、コリア・スクールは圧倒的な少数派です。彼らは外務省内で『朝鮮族』と呼ばれていますが、これは中国の少数民族『朝鮮族』からきたもので、決して主流になれない省内での立場を揶揄したものなんです(苦笑)。将来的に大使などの重要ポストに就ける可能性が小さいコリア・スクールに、今後も人は集まりにくいでしょうね」(元外務省職員)
海外でも情報収集は「公安」任せ
そんな現状を象徴する事実として、歴代の駐韓国大使にはスクール出身者がひとりしかいないことも挙げられる。また、最近では中国や北朝鮮問題の比重が増してきたため、外務省傍流のアジア大洋州局長から3人の事務次官が誕生したが、いずれもアメリカ・スクールの出身であり、朝鮮語を操れる人物はいない。