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白人も、カラードと呼ばれる混血(原住民のホッテントット、オランダの東インド会社が連れて来た東洋人の奴隷、黒人と白人移住者との間にできた子孫たち)も、そしてインド人たちも、南アではそれなりに、自分たちの居住区で豊かに暮らしている。貧富の差は、個人の才能や運や勤勉の度合いに比例するだけで、階級の間にはない。「私たちは日本人みたいに勤勉に働いて、差別と貧困の中でも熱心に子供たちを教育したものです」と豪邸に住むインド人医師の未亡人は胸を張る。

 唯一例外の黒人地区には、どの町にも貧しい掘っ建て小屋に住む人たちの居住区がある。共同水道。屋外のトイレ。アパルトヘイト廃止後も、彼らは極めて政治的である。彼らは自分たちの学校を自ら壊し、いまだに初等教育は満足に行われていない。「教育の前に自由だ!」と彼らは叫ぶ。そしてそれに反対する人がいると、リンチに近い報復が行われる。

 黒人問題を思う時だけ、私の胸に暗く重い南アが、かぶさってくるのを止めようがなかった。

 「どうしたら解決できますか?」

と私が聞くと、女性たちの解放のために働いているという白人の女性は答えた。「憶病をなくすことです。現実を見つめない、という憶病をなくすことね」(以上、読売新聞1992年10月6日付)