韓国統一省と、脱北者をサポートしている南北ハナ財団が韓国在住の脱北者の約半分にあたる約1万3000人を対象に調査を行った結果を9日に発表した。

これを報じたメディアの論調は、脱北者が置かれた現状を楽観視するものとそうでないものに分かれている。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)や韓国のCBS(キリスト教放送)などは、「脱北者の経済事情が多少改善した」「脱北青少年の多くが韓国の学校教育に満足している」「脱北者の3分の2が韓国での生活に満足している」と楽観的に報じている。

しかし、多くの韓国メディアは「脱北者の月収は韓国人の3分の2なのに平均労働時間はむしろ長い」「脱北青少年は出身を隠したがる」と、厳しい認識に立って報じている。

所得は低く、労働時間は長い

詳しい調査結果は次のとおりだ。

脱北者の賃金労働者の2014年の月平均所得は147万1000ウォン。2013年より5万7000ウォン増加したが、韓国国民平均の223万1000ウォンの3分の2だった。

脱北者の週平均労働時間は47時間で一般国民(44.1時間)に比べて3時間近く長い。

脱北者の職種は単純労務(32.6%)、サービス業(23.1%)、技能労働者(12.2%)、事務職(8.3%)。専門性の高い職業に付くのが難しいことが調査結果からわかる。

過去1年の間に、北朝鮮出身という理由で差別されたり無視されたたりした経験があるとの回答は25.3%だった。

約2割が自殺衝動、出身を隠したがる青少年

調査では、メンタルヘルスに問題を抱えている脱北者が多いこともわかった。

脱北者1785人を対象に別個の調査を行った結果、自殺衝動を感じたことがあるかとの質問に20.9%が「ある」と答えた。これは、一般の韓国国民(6.8%)よりかなり高い。

脱北青少年は、自分の出身を隠そうとする傾向にある。自分の出身について「なるべく明らかにしたくない」という回答は32.3%、「絶対に明らかにしたくない」は26.1%だった。 2012年の調査の54.4%より約4%増加した。

出身を明らかにしたくない理由は「必要がない」が44.2%で最も多く、「差別を受けるかもしれない」(26%)、「好奇心を持たれたくない」(16.4%)などの順だ。

「ホンネ」を殺す教育を受けてきた脱北者たち

韓国での暮らしに満足しているかという問いに67.6%が「満足している」と答えた。その理由として次のようなものが挙げられた。47.4%が「自分がやりたいことをしているから」、42.3%が「経済的余裕が生じたから」と答えた。

脱北者の3分の2が韓国での暮らしに満足しているとの調査結果を受けて、南北ハナ財団の関係者はRFAの取材に「脱北者は概ねポジティブに生きているように思う」と答えている。

北朝鮮の教育は、金日成・正日・正恩氏ら3代の独裁者に対する忠誠心を植え付けることが基本だ。自分の考えを述べることより、教えられた通りのことを繰り返すことが求められる。口答えすることは教師への挑戦を越えて、体制そのものへの挑戦となる。

そのような環境で暮らしてきた脱北者が、韓国にやってきても「本音」よりは「望まれている建前」を優先させてしまうことは充分にありうることだ。その点に留意しつつ、調査結果を読むことが必要だろう。

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