北朝鮮「化粧品」最前線

化粧品の質を絶えず高めてわが人民が他国のものではなく「ウンハス(銀河水)」商標をつけたわれわれの化粧品を先に求めるようにし、ひいては「ウンハス」化粧品が世界市場でも有名になるようにすべきだ。(2015年2月5日付労働新聞より金正恩氏談)※編集部注:ウンハス=ウナス

金正恩氏が、「平壌化粧品工場」を現地指導して化粧品を充実させるよう指示した。(関連記事

最近の金正恩氏は、軍部とりわけ空軍の現地指導が多かった。このところの軍関連の視察には妹の与正氏の姿は確認されなかったが、今回の視察には同行している。

与正氏と化粧品工場を現地視察する金正恩氏
与正氏と化粧品工場を現地視察する金正恩氏

しかし、相変わらず正恩氏はタバコが手離せないようだ。本人からすれば「最高尊厳の辞書に禁煙という二文字はない」といったところかもしれない。(関連記事

そもそも、美容化粧品を作る工場で、「美容の大敵」といわれるタバコの煙をくゆらせながら、「ナチュラルで低刺激な化粧品を作りなさい」と指示するのはいかがなものか。

金正恩氏イチオシの化粧品「銀河水化粧品」

現地視察を通じて、正恩氏は北朝鮮独自のブランド「銀河水化粧品」をグローバル市場で有名になるようにすべきだと強調している。

「工場で生産している『銀河水化粧品』の人気が高いが、それに満足せず世界的に有名な製品と堂々と競争できる化粧品の生産闘争をさらに力を入れなければならない」(金正恩氏談)

まさか、正恩氏は「銀河水化粧品」で、シャネルやディオールと闘うつもりなのか?!

万が一、正恩氏が「化粧品戦闘」で世界制覇の野望をもっていたとしても、残念ながらその前途は明るくない。なぜなら、北朝鮮ですら「銀河水化粧品」の人気が高くないからだ。

昨年の8月、朝鮮総連の機関紙である朝鮮新報は、平壌市内で北朝鮮の化粧品ブランドの人気ランキングを調査した映像を配信した。その結果、最も人気があったのは「ポムヒャンギ(春の薫り)」で、次ぎに「未来」「開城高麗人参」と続き「金剛山」と「銀河水」は最下位だった。

映像では、「平壌第1百貨店」の店員が「ウナス(銀河水)とポムヒャンギを扱っているが、一番人気はポムヒャンギです。私も使っている!」とコメント。「ポムヒャンギ6種桃色セット」が肌艶と保湿にいいとの声も聞かれた。

しかし、北朝鮮で本当に人気があるのは密かに売られている「韓流コスメ」なのである。(関連記事

真の化粧品チャンピオンは韓流コスメで、公式市場ランキングでも人気がない「銀河水」。それにもかかわらず、なぜ金正恩氏はイチオシするのだろうか…と考えているとピン!ときた。

「銀河水」といえばセックス・スキャンダルで解散させられたという噂のある「銀河水管弦楽団」だ。そして、「銀河水管弦楽団」には、金正恩氏の夫人・李雪主(リ・ソルチュ)氏が歌手として所属していた。

もしかしたら「銀河水」とは李雪主氏のことであり、だからこそ正恩氏は銀河水化粧品をイチオシしている?だの何だのと論じるのは、深読みしすぎだろうか。

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高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記

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