性に関する本の新聞広告とそのすぐ上の記事の発禁処分に関するお知らせ記事が時代を如実に表している。(画像:Naverニュースライブラリー)
性に関する本の新聞広告とそのすぐ上の記事の発禁処分に関するお知らせ記事が時代を如実に表している。(画像:Naverニュースライブラリー)
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朝鮮語の新聞に初めて「同性愛」の3文字が登場したのは1924年のことと思われる。その記事は次のようなものだった。

学生と同性愛
辞職した片山教授
早稲田大学文学部の片山伸氏が今年6月に突然学校を辞職したが、辞職した動機は牛島という美男子学生と同性恋愛を懇請しキスをした故に学生が耐えられず問題を起こしたせいからと言う。

1924年10月15日 東亜日報

朝鮮において同性愛を扱ったほぼ最初のものと思われる1924年10月25日付の東亜日報。(画像:Naverニュースライブラリー)
朝鮮において同性愛を扱ったほぼ最初のものと思われる1924年10月25日付の東亜日報。(画像:Naverニュースライブラリー)

?記事では「片山」となっているが、井伏鱒二の恩師で彼にもセクハラを行ったロシア文学者の「片上伸」と見て間違いない。片上は別件のセクハラで1924年に大学から退職勧告を受けて辞職しロシアに留学したと坪内逍遥の日記に記されている。

また、同時期の朝鮮中央日報には、江原道(カンウォンド)金化(キムファ、現在は軍事境界線のすぐ南側)の宿で別の男性宿泊客にセクハラを行った角で御用となった男性を「変態」とする記事が掲載されている。

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ただ、「男色」という言葉も同時並行して使われている。1924年5月17日の東亜日報には釜山で24歳の男が17歳の少年と鶏姦(アナル・セックス)中に少年が脳溢血で死んでしまい逃げた、船に連れ込んで「男色という醜悪な行為」に及んだと伝えている。

性に関する本が増えるのと同時に同性愛を「変態性欲」として否定的に扱う記事が徐々に紙面を飾るようになった。しかし、エロ・グロ・ナンセンスの時代は終わり、軍国主義体制が強化されるにつれ朝鮮語新聞もそれを飾っていた同性愛の記事も姿を消していく。

独立後の韓国メディアでは、同性愛について扱った記事が時々見受けられるが、あくまでも国外のものであり、そもそも韓国国内で同性愛が社会的に認識されることはなかった。

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朝鮮半島の南北分断から半世紀たった1990年代から韓国は急激な変化を遂げ、同性愛も徐々に社会的に認識されるようになった。同性婚についても議論されるようになった。

次回は、このあたりをさらに掘り下げて「韓国の同性愛事情」について書いてみたい。つづく

【連載】北朝鮮の同性愛事情


【1】小説に描かれた「ゲイは非人間的」



【2】北朝鮮のゲイは「理解も迫害もされない」



【3】北朝鮮でゲイが発覚すればどうなる?処遇はお上のさじ加減次第



【4】「ゲイは変態性欲」西洋の精神医学が変えた「朝鮮の性」の観念



【5】キリスト教「ゲイはエイズをまき散らす」同性愛者「キリスト教はヘイトをまき散らすな」韓国で深まる対立



【6】「平壌を再び朝鮮のエルサレムに」同性愛とキリスト教と北朝鮮