それでも北朝鮮に同性愛者はいる
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面前述のナショナルジオグラフィックの番組では、ディエゴ・ブニュエル氏が言う「ホモセクシャル」という言葉を北朝鮮のガイドが知らなかった。ディエゴ氏が「男性と女性が夜を共にするように、男性と男性、女性と女性も夜を共にする」と説明してもガイドは怪訝な顔をするだけで何のことだか全く理解していない様子だった。
しかし、概念がわかっていないからと言って同性愛者が存在しないわけではない。脱北者チャン・ヨンジン氏のケースはそれを表している。
彼が香港のファー・イースタン・エコノミック・レビューに語ったところによると、彼は母親の選んだ女性と結婚したが、妻との性生活に不快感とストレスを感じて悩んでいた。北朝鮮内で色んな病院を回ったが、医師ですら同性愛のことを知らなかったようで正しい診断を受けられなった。
(編集部注:アメリカの精神医学会のDSMでは1973年に同性愛を精神障害として扱わなくなった。WHOの疾病リストからも1993年に削除されている。また、日本政府や日本精神神経学会もこれに従っている。)
チャン氏は、結婚9年で離婚したが、離婚届は却下された。「自分なんかいないほうが妻は幸せになるのではないか」という思いで中朝国境を経て脱北し韓国大使館に駆け込んだが、亡命申請は受け付けられなかった。絶望して北朝鮮に帰ったが紆余曲折を経て軍事境界線を超えて韓国にやって来た。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面それから2年後、彼は韓国の新聞で偶然男性2人のキスシーンを写真を見た。それを見て興奮したことをきっかけに様々な本を読みゲイバーに通ってようやく彼は同性愛者であることがわかった。
朝鮮半島に元々同性愛が存在しなかったから北朝鮮の人は同性愛を理解できないのだろうか。もちろんそうではない。歴史的に朝鮮半島にも同性愛は存在し続けてきた。次号ではそのことについて触れる。(つづく)
【連載】北朝鮮の同性愛事情
【1】小説に描かれた「ゲイは非人間的」
【2】北朝鮮のゲイは「理解も迫害もされない」
【3】北朝鮮でゲイが発覚すればどうなる?処遇はお上のさじ加減次第
【4】「ゲイは変態性欲」西洋の精神医学が変えた「朝鮮の性」の観念
【5】キリスト教「ゲイはエイズをまき散らす」同性愛者「キリスト教はヘイトをまき散らすな」韓国で深まる対立
【6】「平壌を再び朝鮮のエルサレムに」同性愛とキリスト教と北朝鮮