金正恩氏が世界的な禁煙ブームの流れに逆らってスモーカー、それも相当なヘビースモーカーであることは公式メディアの写真から明らかになっている。

しかし、場所をわきまえずタバコを吸う姿には北朝鮮国内からも疑問の声が聞こえてくる。なぜ、金正恩氏はこれ見よがしに「歩きタバコ」の姿を見せるのだろうか?

火気厳禁の工場でも

北朝鮮の労働新聞は21日、金正恩氏がリュウォン靴工場を現地指導したと報じた。この日の現地指導には金与正(キム・ヨジョン)氏に加えて安政秀(アン・ジョンス)氏、李載佾(リ・ジェイル)氏も同行した。ここでその写真を見てみよう。

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さらに、正恩氏は火の付いたタバコを持ったまま現地指導を行っている。

16日付労働新聞は、正恩氏が、江東精密機械工場を現地指導する写真を掲載したが、この時もタバコを手にしている。

工場でタバコを吸う金正恩氏

イメージ戦略に悪影響

これ以外でも、現地指導で頻繁にタバコを吸っている正恩氏の様子が労働新聞で紹介されている。ちなみに吸っている銘柄は北朝鮮国産タバコの「7.27」だ。世界中で禁煙ブームが巻き起こっているなか、なぜ正恩氏はあえて時代に逆行する姿を見せるのだろうか?

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そもそも朝鮮半島は儒教の教えで年上や目上の人の前でタバコを吸うことはNGだ。どうしても吸いたいときには席を外したり、タバコの箱をテーブルに置いてさりげなく喫煙者であることをアピールして相手の「吸ってもいい」の一言を待ったりする。

祖父ぐらいの年齢差がある老幹部の前でも平気でスパスパとタバコを吸う正恩氏の態度は、儒教的な観点から非難の的になりかねない。

自己顕示欲の強い彼からすれば「最高指導者たる者は誰の前でもどこの場所でもタバコを吸える」というアピールだろう。しかし、ただでさえ「若造のくせに生意気」という悪評が立っているのに「歩きタバコの現地指導」はイメージ戦略としては首を傾げざるをえない。

それだけではない。

正恩氏の「歩きタバコの現地指導」は儒教的道徳に反するどころか北朝鮮の法律に違反している可能性がある。

北朝鮮の消防法15条「火災を起こしうる・・・」

北朝鮮の消防法15条は「機関、企業所、団体と公民は火災危険性物質、可燃性物質などを保管、取り扱う建物や場所で火災を起こしうる作業を行ってはならない」としている。

靴工場では接着剤などの引火性物質が大量に使われていて、綿ぼこりも舞っている。タバコの火が引火でもしたら火事になりかねない。精密機械工場での喫煙もタバコのヤニが機械に悪影響を与えかねないので厳禁のはずだ。

道徳的にも、安全的にも問題があり過ぎる最高指導者の喫煙行為は、北朝鮮の庶民からは呆れられ、海外からは苦笑されているだろう。

もっとも「超法規的人物」の金正恩氏からすれば「誰の前、どこの場所でタバコを吸おうが知ったこっちゃない」ぐらいにしか考えていないかもしれないが…。

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