米国のブッシュ元大統領は、北朝鮮のほかにイランとイラクを「悪の枢軸」と呼んだ。この中東2カ国の当時の勢いがかすむほど、武装勢力「イスラム国」(IS)は、国際社会に強いインパクトを与えている。

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金正恩氏2013年7月に訪朝したシリア政府代表団の面々

では、北朝鮮とイスラム国の関係はどうなっているのか?

核開発で協力

北朝鮮はもともと、中東諸国などのイスラム圏とは良好な関係を維持してきた。その軸となってきたのは、武器取引である。

端的な例が、弾道ミサイル開発だ。北朝鮮は1976年、第4次中東戦争に協力した見返りとして、エジプトから旧ソ連製の「スカッド」ミサイルを入手。これをリバースエンジニアリングによって複製し、さらに射程を伸ばして「ノドン」を開発した。

北朝鮮は国産スカッドとノドンをエジプト、シリア、リビア、イエメン、イラン、パキスタンなどの国々に輸出し、戦車や歩兵用火器なども大量に売って来た。

中でもシリアとは、核開発で協力関係にあったことが指摘されている。

脱北し、現在は韓国・ソウル在住のある元北朝鮮外交官は、北朝鮮の外交エリートたちの実態について次のように話す。

「北朝鮮の外交官で最も優秀な面々は、対米部門や国連代表部を志望する。責任重大で失敗すればダメージも大きいが、困難な仕事に敢えてチャレンジすることで出世を目指す『戦士タイプ』だ。次に優秀なグループが、中東に赴く『商人タイプ』だ。武器取引で外貨(上納金)を稼ぎ、上層部に取り入るのが上手い」

また、ソニーの映画製作子会社がハッキングを受けた事件では、北朝鮮の武器取引企業の中東駐在員らが米国の制裁対象に指定されている。

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そしていま、ISの部隊は北朝鮮製の戦車や携帯型対空ミサイルで武装しているとの情報が出ている。もっとも、それらは北朝鮮がシリア政府に輸出したものを、ISが奪取したもののようだ。

金親子の盟友

むしろ北朝鮮は、このところのイスラム原理主義運動とは、折り合いが悪いと見ることができるかもしれない。

たとえば、2011年のエジプト革命によってムスリム同胞団の政権にとって替わられたムバラク元大統領は、金日成主席と金正日総書記の盟友だった。また今月14日には、北朝鮮の高麗航空のフェイスブックが、イスラム国の関係者を称する何者かにハッキングされる事件もあった。

人質2人の殺害予告を受けた日本の衝撃とは比べるべくもない些細な出来事だが、イスラム国と敵対するシリアのアサド政権に武器を売っている北朝鮮は、より強烈なけん制を受けても不思議ではない。

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イスラム国の勢力拡大が、中東での武器取引という北朝鮮のドル箱に、米国による制裁以上に大きな影響を与えることも考えられるのだ。

(取材・文/ジャーナリスト 李策)

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