「外貨稼ぎ」か新興富裕層の「投資」

北朝鮮では住宅は国から与えられる。私有財産ではなくあくまでも国のものであり個人間の住宅取引は違法だ。

しかし、建設資金の不足などにより新興富裕層など個人がマンション建設に乗り出すケースも増えている。

【参考記事】資金不足で建設中止が相次ぐ 民間に丸投げする北朝鮮当局

北朝鮮の新義州(シニジュ)市では建設中のマンションが3万ドルで取引されるなど、本来ありえないはずの活気が不動産市場に満ちている。

平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋は次のように伝える。

「新義州の不動産開発が2年前から活発になっている」
「昨年7、8月頃から市内中心部の彩霞洞(チェハドン)に高層マンションの建設が進められている」

このマンションは人民武力部所属の外貨稼ぎの会社やトンジュ(金主)と呼ばれる新興富裕層の投資で建設が進められている。元々あった新義州最大の物流市場の「彩霞市場」は南上洞(ナムサンドン)公園のあったところに移された。

新義州市の地図
新義州市の地図。赤丸が今回マンションの建設される彩霞洞。青丸は市場の移転先の南上洞。©韓国観光公社

さらに、内部情報筋は続けた。

「このマンションは100平米ほどのモダンな構造で、駅と税関が近く交通の便がいいのでよそに比べて高い」

「骨組みだけなら2万ドル(約238万円)、内部の工事までやれば2万5000ドル(約298万円)、インテリアまで完備したものは3万ドル(約358万円)で取引されている」

ちなみにこのような形で完成レベルで値段が異なるのは東南アジアなどでも一般的だ。

北朝鮮では住宅取引は厳密に言えば違法だ。しかし、機関、企業所、トンジュなど個人投資家が増えて住宅取引が活発に行われている。

マンションの建設に必要なセメント、鉄筋、外装材、木材、壁紙などほぼすべての材料は中国の丹東から輸入する。

建設現場に動員されているのは国営企業所の労働者と「83組」の専門建設労働者だ。「83組」とは左官、タイルの作業を行うももので5〜8人1組で動く。骨組みの立ち上げた終わったマンションで作業を行う。

「83組」は施工主と話し合って工賃を決める。内部の工事に入ると昼夜を分かたず工事を続ける。労働者1人の日当は少なくとも3万〜5万ウォン(約420円~700円)になる。

マンションが建設されている新義州市彩霞洞の航空写真
マンションが建設されている新義州市彩霞洞の航空写真

「個人が会社名義で不動産建設に投資した場合の利益は3:7で、個人投資家の30%の利益は完成されたマンションで受け取る」

「投資を受けた会社は、工場、企業所との合意で労働者を採用する。労働者には配給と食事が保証される」

トンジュは、個人名義のままでは国土管理局からマンション建設の許可を得られないので、会社に投資する形をとる。資金を貸し出して利子を取る形もあるが、北朝鮮には私有財産を保護する法律がないため騙されたとしてもどこにも訴え出ることはできない。むしろ処罰を受けるおそれすらある。

そのためにトンジュは比較的安全な不動産建設に投資して30%の利益を稼ごうとするのだ。今後も投資は続くだろうと内部情報筋は見ている。

完成したマンションは幹部や新興富裕層が購入する。将来を見越して家族や親戚の名義で2軒、3軒と購入するケースも増えている。

マンション建設に伴い立ち退きを余儀なくされた住民は新義州市医学専門学校の寮や親戚の家で暮らしている。彼らはマンションが完成した後に入居する予定だ。

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