韓国艦「撃沈」の魚雷も販売

オバマ米大統領はソニー・ミュージック・エンタテインメントへのサイバー攻撃と関連して、北朝鮮の人民武力部偵察総局をはじめとする3機関および10個人に対して経済制裁を発動した。対象となったのはいずれも、中東やアフリカで兵器ビジネスに携わって来た「武器商人」たちと見られる(関連記事)。

kimyonchol
米国の制裁対象とされた人民武力部偵察総局の金英哲総局長

しかし、北朝鮮はこれまでも、米国や国連から繰り返し制裁を受けながら、会社の看板を付け替え、あるいは組織を再編しながら、監視の目をすり抜けてきた。

今回の制裁対象になった「朝鮮鉱業開発貿易会社」(KOMID)も、かなり前から兵器輸出の窓口として悪名高かった組織だ。「蒼光(チャングァン)信用会社」などいくつもの名前を使い分けてビジネスを続けてきたが、2007年に国連制裁の対象に指定された。

そして、その代替として設立されたのが青松連合(Green Pine Associated Corporation)なる企業だ。韓国の情報筋によれば、「青松連合は中国・イタリア・オーストリア・イラン・マレーシアなど海外に支社を置き、北朝鮮が兵器取引で1年間に稼ぐ1億?5億ドルのうち、半分ほどを売り上げてきた」という。

同社はまた、韓国当局が「10年3月の哨戒艦『天安』撃沈の際に北が使用した」と主張する、「CHT‐02D魚雷」の輸出企業としてその名を取り沙汰されたこともある。

今回、KOMIDと並び米国の制裁対象となった「朝鮮檀君貿易会社」も、とっくの昔に国際社会の追跡対象となっているが、09年11月には軍用防護服約1万4千着を中国・大連港経由でシリアに輸出しようとして、貨物船寄港地のギリシャで押収される事件があった。同社は大量破壊兵器の開発を担う北朝鮮「第2自然科学院」の傘下にある。

これらの企業はいずれも、北朝鮮の核実験やミサイル発射に対する国連および米国の制裁対象となっており、さらに名前を変えるなどしてビジネスを続けているはずだ。

北朝鮮製の兵器については、主要国が武器輸出を自粛している中東やアフリカの紛争当事国を中心に、なおも引き合いが強いとされる。

【関連記事】エチオピアが国連の「対北制裁」を無視?

主要国や国連がいくら制裁を叫ぼうとも、顧客がいる限り、北朝鮮が兵器ビジネスを放棄することはない。

「利権の巣窟」奪い合うパワーゲームも

北朝鮮にとって、兵器ビジネスはドル箱であり、その一線で暗躍する幹部達はぜいたく三昧の暮らしを享受してきた。

「青松連合北京代表のチェ・グァンヒョク(37)の場合、ベンツ『S350』に乗ってゴルフ場のVIP会員券を購入し、ほとんど毎日ゴルフを楽しんでいることが分かった。北京中心街ウィントル(Wintle)センターの最高級住宅に住み、韓国人富豪として振る舞っていると言われている」

韓国紙・中央日報電子版は10年11月10日付で、このように報じている。

一方、利権と特権の巣窟とも言える兵器ビジネスの窓口会社は、軍上層部のパワーゲームの舞台にもなってきた。

同紙12年7月18日付によれば、青松連合は元々、総参謀長や党作戦部長を歴任してきた軍部の元老・呉克烈(オ・グンリョル)国防副委員長が掌握していたが、09年に入り、金英哲(キム・ヨンチョル)偵察総局長が実権を奪い取ったという。

09年は金正恩が後継者に決まり、金正日からの権力移譲が急ピッチで進められていた時期だ。また偵察総局は、09年4月に行われた工作機関の再編成によって、軍偵察局に党の作戦部と35号室が統合されて誕生した。その経緯から、金正恩の「親衛勢力」とも目されている。

(取材・文/ジャーナリスト 李策)

【関連記事】
サイバー攻撃で制裁指定された「北の武器商人たち」の正体
サイバー攻撃で米制裁対象の北朝鮮商社員はアフリカ、中東、ロシア駐在
エチオピアが国連の「対北制裁」を無視?
サイバー攻撃「真犯人を知っているが北朝鮮も気に入らないから教えない」とマカフィー創業者

    関連記事