北朝鮮の人権蹂躙に対する国際社会の追及が、新たな段階に歩を進めた。国連安全保障理事会は22日、北朝鮮の人権問題を新たな議題として採択。今後は人権問題の国際刑事裁判所(ICC)への付託を協議するほか、人権侵害を主導する北朝鮮指導部への制裁についても協議できることになった。

これは、日本にとっても大きな成果だ。拉致問題を抱える日本政府は、欧州連合(EU)とともに国連北朝鮮人権調査委員会の設置を主導。同委員会は今年2月、政治犯収容所での虐待や処刑、飢餓などを「人道に対する罪」と初めて認定する最終報告書を発表。報告書は日本人拉致にも言及している。こうした動きが、今回の安保理による議題採択につながったのだ。

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しかしそれにしては、北朝鮮を「追い詰めている」雰囲気が国内に広がらない。理由は、NHKと民放各局の「沈黙」にある。各局とも、安保理の動きなどをストレートニュースとしては報じているものの、北朝鮮の人権問題に関する特集を組む動きは見えない。なぜか。テレビ業界関係者が話す。

「北朝鮮の人権問題を扱うと、総連からものすごいクレームが来るのです。とくに、コチェビや飢餓に関する内部映像など使おうものなら、『お前の所には現地取材の許可を出さない』と凄んでくる。これをやられると、外報部などは一発で折れてしまう」

公安が注視する「資金ルート」

このところ日朝関係に動きが見えていることもあり、北朝鮮への「入国禁止」は、テレビ局にとって何よりも痛い。それを考えれば、総連の横暴が最も非難されるべきあるのは言うまでもない。

ただそれも、テレビ局が北朝鮮の体制が引き起こす様々な問題について、核心を突くスクープをねらっているならば、との前提をつけなければなるまい。

実際のところ、テレビ局は総連による「入国許可」の対価として相当な額の金銭を払うことで、持ちつ持たれつの関係に陥っている。総連はカネ、テレビ局は視聴率という形で、利益を分け合う構図だ。

しかも、総連に直接カネを支払ったとなれば報道倫理に触れてしまうため、総連の関連企業を経由させるという「資金洗浄(マネーロンダリング)」まがいの手段が取られている。ちなみにその実態については、すでに公安当局が把握済みであることを付言しておく。

(取材・文/ ジャーナリスト 李策)

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