12月24日は誰の誕生日か?

クリスマス・イブである12月24日、北朝鮮のカレンダーには次のように記されている。

「抗日の女性英雄金正淑(キム・ジョンスク)同志が誕生された」

金正淑とは金日成氏の妻であり、金正日氏の実母だ。北朝鮮で、12月24日はイエス・キリストの誕生日を祝うのではなく、偉大なる総書記の実母を祝う日である。

北朝鮮に広まる「地下教会」

北朝鮮では、法律上は宗教の自由は認められているものの、キリスト教は「禁教」として弾圧の対象である。裏で盛んな地下教会に対する弾圧は、今でも続いており、世界のキリスト教団体から度々非難されている。

ただし、北朝鮮でキリスト教が徹底的に弾圧された一方で、日成氏自身がクリスチャンの家庭に育ったという興味深い事実もある。

日成氏の母である康盤石(カン・バンソク)の名前は、新約聖書に出てくる「使徒ペテロ」にちなんでいる。イエスがペテロに「あなたは私の盤石だから、お前の上に教会を建てよう」と語ったように「盤石」はキリスト教で特別の意味を持つ言葉である。

また、日成氏が教会に通ったことは1992年に公開された回顧録にも記されている。そもそも分断される前の北朝鮮は、韓国よりキリスト教が盛んで平壌(ピョンヤン)は『東洋のエルサレム』と呼ばれていた。キリスト教が弾圧されはじめるのは北朝鮮が社会主義体制になって以後のことだ。

首領独裁制の根底には、唯一神を崇めるキリスト教の影響が色濃く投影されているという指摘もある。たった一人の最高指導者(金日成、金正日、金正恩)を崇めるために、一方の唯一神=キリスト教を排除しなければならなかったのだろう。

しかし、北朝鮮でも地下教会が広まっている。また、2000年頃から中国を通じてクリスマス文化が入り込み、楽しむ風習が広まった。とくに平壌の幹部や富裕層の若者や大学生は、「キリストの誕生日」というよりは、世界的な楽しいイベントの日として盛大にパーティーを開き、クリスマスソングを歌って楽しむ。

もちろん、北朝鮮当局は、若者達がクリスマスを楽しむ様子を苦々しい思いで見ているだろう。しかし、特権階級が中心になった遊びであり、既に定着しつつあることから厳しく取り締れないようだ。

70年かけて徹底的に弾圧してキリスト教文化を排除したはずだったが、既に国内に流入することを防ぐのは不可能になりつつある。

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