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ただし、北朝鮮でキリスト教が徹底的に弾圧された一方で、日成氏自身がクリスチャンの家庭に育ったという興味深い事実もある。

日成氏の母である康盤石(カン・バンソク)の名前は、新約聖書に出てくる「使徒ペテロ」にちなんでいる。イエスがペテロに「あなたは私の盤石だから、お前の上に教会を建てよう」と語ったように「盤石」はキリスト教で特別の意味を持つ言葉である。

また、日成氏が教会に通ったことは1992年に公開された回顧録にも記されている。そもそも分断される前の北朝鮮は、韓国よりキリスト教が盛んで平壌(ピョンヤン)は『東洋のエルサレム』と呼ばれていた。キリスト教が弾圧されはじめるのは北朝鮮が社会主義体制になって以後のことだ。

首領独裁制の根底には、唯一神を崇めるキリスト教の影響が色濃く投影されているという指摘もある。たった一人の最高指導者(金日成、金正日、金正恩)を崇めるために、一方の唯一神=キリスト教を排除しなければならなかったのだろう。