そうではあるまい。北朝鮮当局は、何か特定の映像作品をターゲットにしているはずだ。実際、アジアプレスの石丸次郎氏の下には、北朝鮮の取材協力者から次のような情報がもたらされている。
「海外の映像作品のブローカーの一部が、韓国のテレビ局が作った“危ない作品”を国内に持ち込んでいる。内容は、金一族の歴史を暴いているものや、金正恩を揶揄しているものなどだ。あまりにヤバいので庶民の間には出回っていないが、幹部や金持ちがこっそりと観ている。あんなものを観た人間を、当局は生かしておかないだろう」
正恩氏をあざ笑うかのような映像作品が国民の間で楽しまれているなどと、北朝鮮当局が公に認められるはずもない。「淫乱録画物(ポルノ)」や「不純録画物」というのは、正恩氏の「権威」に精いっぱい配慮した、苦し紛れの言い方なのかもしれない。
本当に北の犯行なのか
ハッキリ言えることは、正恩氏の権威確立とその維持が、北朝鮮当局にとって最重要課題となっているということだ。彼らが正恩氏暗殺をコミカルに描いたハリウッド映画に憤って見せるのも、むしろ当たり前のことのように思える。