「ライバル」に生徒奪われ

東京の朝鮮学校が、「存亡の危機」に立たされている。北朝鮮系の民族団体・朝鮮総連が運営する朝鮮学校は、東京都には小学校から大学まで11校が所在するが、そのいずれもが深刻な生徒数の減少に悩んでいる。

生徒数の減少自体は、いまに始まったことではない。金日成・正日親子に対する個人崇拝教育への反発や、在日2世・3世の意識変化を受けて、生徒数は1980年代から継続的に減少傾向をたどって来た。

たとえば、全国の朝鮮学校で最大規模を誇る東京朝鮮中高級学校(北区)の高等部は、80年代末には1学年400名以上を維持していたが、今年入学した高1は120名にまで落ち込んでいる。

近年ではさらに、強力な「ライバル」の台頭にも悩まされるようになった。

11月28日に行われた東京韓国学校(新宿区)の新入生抽選会には、約170名の児童が応募した。来年度の新小学校1年生の定員は120名のため、50名近い児童が枠から漏れてしまったことになる。1954年、韓国民団の主導で開校した同校は、朝鮮学校とは逆に、生徒数が年々増加。スタート時わずか26名だった生徒数は、現在では小・中・高を合わせて約700名に達している。

生徒数が増えている最大の理由は、近年になって新たに来日して定住する韓国人が増えていることにあるが、朝鮮学校の再編が進まないことも大きな要因となっているようだ。総連関係者が話す。

「少子化や民族意識の変化もあり、朝鮮学校の数はかなり前から過剰になっている。近隣の朝鮮学校が生徒数を食い合ってしまうため、小中学校では1学年に数人という例も少なくない。それではサッカー部も作れず、『子供がかわいそうだから』と韓国学校や日本学校に送ってしまう親も多い」

「第2韓国学校」でトドメ

この総連関係者によれば、朝鮮学校の再編が進まない理由は大きくふたつあるという。

「ひとつは、組織の指導力の低下。もうひとつは、コミュニティーへの愛着があだになっている面がある。総連系の在日は、学校を中心に地域共同体を形成してきた。そのため学校再編という『総論』には皆が賛成でも、『うちの地元の学校を残して、ほかを無くせばいい』といった具合に『各論』でぶつかってしまい、調整がつかない」

しかし、再編によって朝鮮学校を復活させるための時間的余裕は、あまり残っていない。7月に韓国を訪問した舛添要一都知事に対し、朴槿恵(パク・クネ)大統領は首都圏で「第2韓国学校」をつくるための用地確保に協力を要請した。民団関係者によれば、「すでに建設費用は本国から送られてきており、土地さえあればいつでもつくれる状態」だという。

「第2韓国学校」が開校すれば、入学希望者の多くが受け入れられることになり、朝鮮学校からの流入にも拍車がかかる可能性が高い。また、韓国学校は本国の進学校並みに、欧米人の教員にもクラスを担任させており、「小6で日常会話ぐらいはクリアできる」(在日の父兄)とされる英語教育も親たちの関心を引き付けている。

「ただ、韓国学校は体育や文化活動の取組みが弱く、その点では朝鮮学校がはるかに優秀。いまのうちに統廃合を進め、スポーツや音楽などの分野で活躍できる『スーパー朝鮮学校』を誕生させれば、良い競争関係を築ける」(前出・総連関係者)

いずれにせよ、朝鮮学校の未来は総連の「改革実行力」にかかってくるということだ。

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