考えられるのは、やはり対米戦略である。弾道ミサイルを搭載して日本列島を迂回し、太平洋から隠密裏に米国本土をねらおうというものだ。
もっとも、それがただちに可能になるわけではない。実現するには、技術的に様々な制約がある(関連記事)。また、「米国やロシアなどすでに弾道ミサイル潜水艦を運用している国々は、護衛とおとり役を兼ねた攻撃型潜水艦を必ず随伴させている。北朝鮮はそうした潜水艦を持っておらず、現実的な脅威になるかは疑問」(自衛隊OB)との指摘もある。
ただ、北朝鮮はこれまでも、経済的・技術的な制約をものともせず、新たな危機をつくり出してきた。それにミサイル潜水艦の太平洋進出が上手くいくか否かにかかわらず、そうした取組みが続けば、いずれ米国は神経を尖らせることになるだろう。
危機のエスカレーション
近年、朝鮮半島において最も危険なホットポイント(発火点)となってきたのは、南北が鋭く対峙する半島西側の海域だ。天安艦爆沈事件や延坪島砲撃事件は、全面戦争に発展してもおかしくない出来事だった。
こうした危険極まりない出来事は、どうして立て続けに起きるのか。背景にあるのは局地的な軍事バランスの変化と、それに影響された当事者(軍人)たちのマインドの変化だ。韓国の軍事アナリストが、次のように分析している。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面「1980年代に入るまで、この海域は北朝鮮海軍の独り舞台だった。ソ連製の高速艇と対艦ミサイルに対抗できる装備が、韓国側になかったからだ。しかしその後の経済発展を受けて、形勢は完全に逆転した。優れた装備を持つ韓国軍は北の艦艇を何度も撃破した。その報復として、北は得意の潜水艦作戦で天安艦を沈めた。装備の変化が危機のエスカレーションを呼んでいるのだ」
金正恩第一書記は海軍の視察時に自ら搭乗するなど、潜水艦戦力を重視する姿勢を見せている。正恩氏にとって新型潜水艦は、切り札としての意味を持っているのかもしれない。
そして、それと直接対峙するのは韓国海軍だけでなく、日本の海上自衛隊でもある。新型潜水艦が本格的な活動を開始したとき、新たな「危機のエスカレーション」が生まれないとは限らないのだ。(了)
(取材・文/李策)
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