中国人「カネ持ち村」も出現

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韓国最大のリゾート、済州島で 2010年2月から始まった不動産投資移民制度。海外マネーの呼び込みが目的だったが、実際に起きているのは中国資本による「植民地化」である(関連記事)。

中国マネーによる猛烈な買収攻勢により、地価が高騰。アパート家賃などの値上がりまで誘い、住民の生活を圧迫している実情については前回述べた。

「2009年の時点で、中国資本が済州島に所有していた土地は1万9702平方メートルに過ぎませんでした。それが今年6月末の時点では592万2327平方メートルと、300倍にまで拡大している」(地元ジャーナリスト)

ちなみに、中国人以外で済州島に土地を所有している主な外国人は、米国籍が約371万平方メートル、日本国籍が約211万平方メートル。両者を足しても中国人の所有分に満たない。そもそも、米国籍と日本国籍の地主には在米韓国人や在日韓国人からの帰化者が相当数含まれていると言われ、新参者としての中国人の存在感は圧倒的である。

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済州島に出現した中国人「カネ持ち村」(アーデンヒルリゾート)の入口(撮影:権徹)

また、済州島に土地を所有する米国人と日本人の場合、所有する土地は面積に対して筆数が少ない(つまりまとまった広い土地を所有している)のが特徴だが、中国人は面積の広さこだわらずに片っ端から土地を買収しているとされる。そのため、従来は不動産開発などとは無縁だった街中の「大屋さん」たちまでもが物件の値上げに走り、一般住民のフトコロを直撃しているというわけだ。

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たとえ不動産価格が高騰しても、地元が中国マネーで潤っていればまだいい。しかし、実態はそうなっていないのだ。 「たしかに、中国人向け高級ヴィラの建設には巨額の資金が投じられていますが、分譲で得られる収益は中国本土のデベロッパーに還流し、施工で生まれた利益の大半はソウルの大手建設会社の取り分になってしまう」(同)

中国人向けの高級ヴィラとしては、すでに分譲の進んでいるものに、「ラオンプライベートタウン」(471世帯/事業規模2708億ウォン)、「アデンヒルリゾート」(372世代/同2488億ウォン)、「緑の済州リゾート」(324世代/同2562億ウォン)があり、 これらだけで、不動産投資移民制度により誘致された外国人投資総額の80%を占める。

これらのヴィラはいずれも、中国人のみを入居対象者として開発されたものであり、分譲が完了すれば、中国人富裕層が集住する「中国人村」が出現することになる。 また、これらに加えて新たなリゾート施設の開発も進んでおり、地元の市民団体などが乱開発による景観破壊への憂慮を表明している。

ブランド品の売り上げはサムスンに

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「街中では、新羅免税店がブランド目当ての中国人観光客で連日ごった返しているが、あそこはサムスン系列。カネは地元を素通りしてソウルに行ってしまうのです」(同)

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中国人団体客で連日ごった返す済州市内の免税店(撮影:権徹)

こうした問題が浮き彫りになるに従い、地元自治体は、不動産投資移民制度を改正すべく検討を開始。ソウルの中央政府と調整を行っている。

改正点は、5億ウォン以上の不動産投資に加え、5億ウォン以上の公債購入を永住権付与の要件に追加するというもの。また、永住権を付与する対象を、済州島人口の約1%に当たる6000人までとする案も出ている。

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しかし、それで中国マネーによる蚕食を止められるかは未知数だ。

「済州島に投資する中国人富裕層の主な目的はマネーロンダリングなんです。中国政府はいま、汚職や脱税で蓄えられた不正資金の摘発を強めていますが、韓国で永住権を得れば、そういうカネを海外に持ち出しやすい。莫大な闇資産を守るためには、5億ウォンだろうが10億ウォンだろうが大した?経費?ではないのです」(中国ウォッチャー)

済州島が中国マネーに完全に飲み込まれる日も、意外と近いのかもしれない(了)。
(写真・権徹/文・李策)