中国の外貨稼ぎのために派遣された北朝鮮の20代女性が急性盲腸炎の手術を受けた後、強制的に帰国させられた。
指定外の病院に行っただけで強制送還?
中国国内のデイリーNK内部情報筋は事の顛末を次のように説明した。
「中国の瀋陽の外貨稼ぎ会社で働いていた20代の女性が突然盲腸にかかって病院で手術を受けた」 「(北朝鮮)の規定に違反して保衛部が承認していない病院で治療を受けて『外部』と接触した可能性があるからだ」
外貨稼ぎで海外に派遣された北朝鮮の労働者は保衛部の許可なく外出することは許されていない。外出の機会が与えられても3人1組で動く。外で韓国やアメリカの宣教師と接触するおそれがあるためだ。
この女性は、保衛部指定ではない病院で治療を受けた際に韓国やアメリカの宣教師と接触した可能性が高いため、帰国させて調査することになった。
命よりも決まりが優先
内部情報筋の説明は続く。
「女性が突然腹痛を訴えたので中国人社長が救急車を呼んだ。病院で治療されて一命を取り留めた」
「女性は社長から医療費を手渡されて術後1週間入院していた」
「数日後にこのことを知った保衛員は、病院でこの女性の入院履歴を確認して社長になぜ事前通告しなかったことのかと問い詰めた」
「社長は『人の生き死にがかかった問題なのに規則通りにやらなければならないのか』と言って保衛部員と揉めた」
「保衛部員は中国人社長に外部との接触は絶対にならない、帰国させて祖国で死ぬべきだと言い放った」
「退院した女性は数日後、北朝鮮に強制帰国させられた」
自由を奪われ、韓国に憧れる女性たち
中国の瀋陽、丹東などに外貨稼ぎに派遣された北朝鮮の20代女性は保衛部員の許可なしには一切外出できない。美人で育ちもいいので外国の実情に触れると思想が揺らぐ恐れありと判断されているためだ。
そんな彼女らの生活について内部情報筋は次のように説明した。
「2週間に1回に外出の機会が与えられても、保衛部に決められた3人が1組で移動しなければならない。普段もこの3人1組で過ごさせて相互監視させている」
「携帯電話の所持すら禁じられている」
「キリスト教との接触は韓国人との接触同様に思想犯として処罰されるので格別の注意を払っている」
「個人行動が30分を超えた場合には自己批判をしなければ処罰されてしまう」
「今回の件は、海外に派遣された若い女性たちに『外部』と接触するとどのような処罰が下されるのかを『見せしめる』ことが目的のようだ」
「不当に帰国させられた女性は入院中の病院で誰に会ったかなど保衛部から根掘り葉掘り聞かれることだろう」
「彼女らは保衛部に監視されながらも韓国社会の情報にキャッチして韓国に行った脱北者にあこがれている」