北朝鮮当局は、張成沢氏の処刑以降、国境地域に検閲組を派遣し、住民の脱北を防ぐための取り締まりを強化しているが、同地域の主要都市の一般家庭に対する宿泊検閲(家族以外の人がいないか確認する自宅訪問)も実施している。

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋によると、宿泊検閲は恵山市全域で毎晩行われており、住民の不満が噴出している。他地域の住民が摘発されると即刻強制追放される。公民証と旅行証で身元確認がとれても一両日中に出ていくよう警告を受ける。

「出張用務や親戚訪問で来た場合でも、訪問目的が明確でない人に対しては無条件に『指定日までに管内から出ろ』と指示するものだから、商人は困り果てている。特に駅前周辺の民泊に対する大々的な検閲が実施されているが、応じなければ強制的に踏み込んでくる」

「少しでも不快感を表したり家宅捜索に不満を示すと殴られることもある。中には『夜中に寝ている人を起こして宿泊検閲をされては堪らない』と不満をこぼす人もいるが、『余計なことをすると検閲要員に難癖をつけられ処罰されかねない』と我慢する人が多い。宿泊業の登録をしていなければ罰金が科されるため客を隠したりもする」

「保安部傘下の政治大学生による検閲が終了すると予想される2月16日(光明星節、金正日総書記の生誕記念日)が近づくにつれ、検閲の強度が高まっている。検閲要員らは成果を出すため、そして検閲が終わる前にワイロを貯めるため宿泊検閲を大々的に行っている」(両江道情報筋)

宿泊検閲の背景について情報筋は「当局は昨年末の張成沢処刑以降、国境地域住民の取締りと脱北を遮断するため、人民保安部傘下の検閲組を派遣した。昨年の同時期にも宿泊検閲が強化されていることから、脱北が容易な冬の今、国境地域での人の移動に対する検問も強化したのでは」と説明した。

情報筋によれば、北朝鮮では大都市を中心に社会奉仕網が国営旅館を営んでいたが、1990年代後半の大飢饉の苦難の行軍以降は、まともに営業されなくなった。そこで、現金を稼ぐために民泊を営む民間人が増えた。

北朝鮮では他地域に旅行し宿泊する場合、まず宿泊地域の人民班に申告しなければならない。人民班長は申告された宿泊登録台帳を整理し人民保安署(警察署)に報告する義務がある。旅行者や出張者は帰宅する際、旅行証明書に仕事をした地域の保安署からサインをもらう必要があるが、この時に人民班の宿泊確認がないと問題になる。

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