「農場の畑は私の畑」というスローガンも協同農場の畑を自身の畑のように大切にしようという意味である。しかしこれも食糧事情が悪化するに従い、軍人が農場の穀物を盗む際の弁明となってしまった。一部の極貧層の住民も農場の穀物を盗む際に同様にスローガンを勝手に解釈して盗みを正当化している。
1990年代の苦難の行軍以降、北朝鮮の経済は崩壊。食糧をはじめとする物資の供給が滞るや、軍の綱紀は緩み寒さと空腹に耐えかねた軍人が住民の集落に侵入し、家畜はもちろん家庭の味噌まで盗むことが日常化している。それにもかかわらず住民は報復を恐れ、軍人によるこうした略奪を目の前に何もできずにいることがほとんど。
前出の脱北者は「軍人は略奪に対して良心の呵責はおろか、堂々と集団で一般家庭の家畜と食糧を強奪していく。周りに保安員(警察)がいても気に留めず、家畜を盗まれた住民が抗議すれば暴行を加え殺害することもある」と話した。