そのため空腹に耐えかねた軍人が、訓練を受ける地域や村の住民の食糧と家畜を略奪することも日常と化している。人民軍隊とは名ばかり、彼らは「農場の畑は私の畑」という党スローガンを「人民の畑は私の畑」と勝手に解釈し堂々と略奪行為を働く。
某脱北者はこれらと関連し「北朝鮮の軍人が住民の家を荒らしたり協同農場の畑を『襲撃』する際に話す言葉がある。『軍隊は人民の息子、農場の畑は私の畑』などである。即ち、白昼住民の家に侵入しても人民の『息子』であるため盗みとならず、農場の穀物を盗んでも『私の畑』であるため盗みにならないとこじつけている」と説明した。
略奪行為を正当化
北朝鮮で「軍隊は人民の息子」という言葉は、1930年代、中国延辺凉水泉子地域でパルチザン活動を展開していた金日成が「司令官も人民の息子」と発言したことに由来する。この時から北朝鮮当局は軍人に人民の命と財産を命をかけて死守するよう奨励してきた。しかし食糧難が深刻化するにつれ、こうした理念がむしろ略奪を正当化してしまった。