中国が進める「民間コンテナ船偽装ミサイル艦」構想が、自衛隊および米軍の作戦構想に深刻な影響を与えるかもしれない。平時は商船、有事には武装艦へと変貌するこの方式は、軍事的合理性と政治的計算を巧妙に組み合わせた、中国流ハイブリッド戦の象徴といえる。

注目されているのは「中大79号」と呼ばれる中型コンテナ船だ。昨年末に明らかになった衛星画像や流出写真の分析から、甲板上にはミサイル発射機能を内蔵したコンテナ型垂直発射装置(VLS)が複数搭載されている可能性が高い。通常の20~40フィートコンテナとほぼ同一の外観を持ち、内部に4~8セルの発射管、排熱装置、電源、指揮制御機能を組み込んだ自己完結型兵器とみられている。

この方式で8~10基を搭載すれば、40~80発規模のミサイル運用が可能となり、ミサイル駆逐艦に匹敵する火力を商船が備える計算になる。搭載ミサイルは、対艦、対空、巡航、対地攻撃型など多様化が想定され、南西諸島、在日米軍基地、台湾方面を同時に脅かす能力を持つ。

最大の問題は、この艦が完全な民間船籍のまま国際航路を航行できる点にある。平時は通常の貨物輸送を行い、港湾で短時間の積み替えを行うだけで、即席のミサイル艦へと変貌する。攻撃意図が明確になるまで、法的にも政治的にも先制攻撃は極めて困難だ。

さらに厄介なのは、中国がこの方式を量産・拡張できる潜在力を持つ点である。世界最大規模の商船隊を保有する中国にとって、数十隻規模の偽装ミサイル艦を短期間で整備することは技術的に難しくない。質で勝る米軍艦隊に対し、量によるミサイル飽和攻撃を仕掛け、防空網を消耗させる戦法が現実味を帯びる。

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また、無人機運用との組み合わせも警戒されている。甲板上から射出される偵察ドローンや電子妨害型無人機、自爆型攻撃ドローンが、レーダー攪乱や迎撃ミサイルの浪費を強制し、その直後に本命のミサイル攻撃を加える「多層飽和攻撃」構想である。防衛側は、迎撃能力の枯渇という致命的な事態に陥りかねない。

こうした「民間×軍事」の融合は、中国が掲げる軍民融合戦略の延長線上にあるものだが、従来の戦争法規を大きく逸脱する。

自衛隊・米軍は現在、衛星常時監視、AIによる船舶画像解析、無人哨戒機、海洋ドローンを組み合わせた多層監視網の構築を急ぐが、数千隻に及ぶ商船の中から「武装船」を即座に識別するのは容易ではない。中国の「偽装ミサイル艦」は、強大な火力以上に、「判断を遅らせ、迷わせ、決断を縛る“いやらしさ”」に本質的な脅威がある。