2026年1月に発生した平壌へのドローン侵入事件をめぐり、金与正氏は韓国に対して激しい非難を浴びせ、「謝罪」を引き出したと誇示するかのような態度を見せている。韓国政府が当初、軍の関与を否定し、後に認めて遺憾の意を示した経緯を巧みに利用し、あたかも自らが主導権を握ったかのように振る舞う姿は、北朝鮮流の「マウント取り」の典型と言えるだろう。

しかし、こうした強気の姿勢の裏で、金与正氏自身が主導した可能性の高い「汚物風船作戦」が、北朝鮮の国力の脆弱さを白日の下にさらした事実を忘れてはならない。

2024年6月、韓国の脱北者団体が飛ばしたビラ風船への報復として、北朝鮮は汚物や古着、破れた衣類、寄生虫を含む風船を大量に韓国へ飛来させた。結果、仁川国際空港の離着陸が一時見合わされるなど混乱を招いたが、同時に、北朝鮮の深刻な物資不足や劣悪な衛生環境が、皮肉にも全世界に露呈する結果となった。

風船の中身に含まれていたのは、継ぎはぎだらけの衣類や、ラベルを剥がされたペットボトル、さらには寄生虫を含む汚物だった。

(参考記事:「妹じゃなきゃ処刑だ」金正恩と与正の微妙な権力均衡と”後継者ジュエ”登場の衝撃

これらは、慢性的な物資欠乏と肥料不足にあえぐ北朝鮮の農業・生活実態を如実に物語っている。体制の威信を誇示するどころか、自国の窮状を自ら暴露する「自爆行為」となったのである。

ドローン事件での強硬発言も、こうした現実を覆い隠すための虚勢にすぎない。いくら言葉の上で優位に立とうとしても、経済力、技術力、国際的影響力における南北の差は、もはや隠しようがない。むしろ過激な言動を重ねるほど、内外に漂う焦燥感は強まる。金与正氏の「マウント」は、北朝鮮が直面する構造的な弱さの裏返しであり、その限界を浮き彫りにしている。