北朝鮮の金正恩総書記が自ら指示した高強度の検閲により、北朝鮮の権力中枢が「内戦状態」とも言える深刻な混乱に陥っていると、韓国の独立系メディア「サンドタイムズ(ST)」が伝えている。STの内部情報筋によると、検閲対象となっている三つの主要組織の間で、責任を押し付け合う中傷や告発、密告が相次ぎ、「お前が死ね、俺は生きる」という状況が広がっているという。
発端は、金正恩氏が肝いりで進めてきた「地方発展20×10政策」をめぐり、虚偽報告や成果の水増しが横行している実態を把握したことだ。金正恩氏は「党大会の時期に関係なく、停滞した事業実態を徹底的に洗い出し、責任者を一掃せよ」と指示。今月19日には、演説で閣僚の即刻解任を宣言するなど、異例の強権発動に踏み切った。
金正恩氏は昨年末、「20×10緊急中央合同検閲グループ(※タスクフォース)」を設置し、大規模な検閲を指示。ターゲットは、①地方発展20×10非常設中央推進委員会、②国防省指揮組、③各道推進委員会の三組織で、いずれも政策遂行の中核を担う存在だという。
消息筋は、今回の検閲は単なる事業点検ではなく、「粛清を前提にした殺生簿だ」と指摘しており、いわば「北朝鮮版デスノート」だ。検閲対象の幹部たちは、生き残るために責任を他人に転嫁しようと必死になっているという。
当初10日程度と見られていた検閲は延長され、現在も続いている。検閲団が重点的に調べているのは、冬場の無理な工事による手抜き施工、資材不足、虚偽報告、国防省と地方行政の指揮系統の混乱、建設資材の横領など五つの問題だ。検閲現場では怒号が飛び交い、検閲は「政策点検」ではなく「内部抗争」の様相を呈している。
検閲団は、こうした対立を止めるどころか、処分名簿を充実させる材料として利用しているとされる。集められた不正資料は、近く開かれる朝鮮労働党第9回大会での大規模な人事刷新に使われる見通しだ。19日に梁承鎬副首相が視察現場で電撃更迭されたことも、幹部たちには「党大会に向けた粛清の予告編」と受け止められている。
