朝鮮中央通信は9日、金正恩国務委員長がロシアのプーチン大統領に対し、新年の祝賀メッセージへの返書を送ったと報じた。

「あなたが送ってくれた温かい祝賀書簡をうれしい気持ちで受け取りました」との言葉で始まる返書は、もはや外交文書というより「忠誠宣誓文」に近い内容である。「あなたの全ての政策と決定を無条件的に尊重し、無条件的に支持する」「この選択は不変であり、永遠である」との文言は、独立国家の首脳が用いる表現とは思えない。北朝鮮が掲げてきたはずの「自主」「主体」は、モスクワ行きの特急列車に乗せられ、どこかへ置き去りにされた格好だ。

この異様なまでの「プーチン礼賛」は、背景を知れば皮肉に満ちている。韓国の独立系メディア「サンドタイムズ」によれば、北朝鮮では深刻な外貨不足と食糧難が続き、当局は企業や機関に対し、ロシア向け労働力派遣や物資供出を通じた外貨稼ぎを一段と強めている。若者や兵士が「友好」の名の下でロシア関連事業に動員され、国内経済の空洞化はさらに進んでいるという。

また別の記事では、ロシアへの派兵や軍需支援が長期化する中、前線での戦死者増加や補償問題を巡る不満が、軍内部や家族の間で静かに広がっている実態が伝えられた。にもかかわらず、金正恩氏はそうした現実には一切触れず、「兄弟のロシア人民に成功と勝利だけがあることを祈願する」とまで言い切った。勝利を祈られる側が誰で、その代償を誰が払っているのかは、意図的にぼかされている。

(参考記事:「迷惑だ」プーチンからの贈り物に北朝鮮国民ブチ切れ

北朝鮮指導部にとって、ロシアはもはや「戦略的パートナー」という建前を超えた生命線だ。国連制裁下で中国にも距離を取られつつある中、外貨、食糧、エネルギー、そして体制維持の後ろ盾を一手に期待できる相手はプーチン政権しかない。その切実さが、「無条件」「永遠」といった過剰な言葉遣いとなって噴き出したのだろう。

だが、ここに最大の皮肉がある。

金正恩氏がこれほどまでに頼り切るプーチン氏自身が、ウクライナ戦争の長期化で国力を消耗し、国際的にも孤立を深めている点だ。「最も親しい同志」にすがる北朝鮮の姿は、沈みゆく船にしがみつく別の船の船長のようにも映る。

主体国家を標榜してきた北朝鮮が、いまや他国首脳の「全ての政策」を無条件支持すると公言する。この返書は、金正恩体制の自信を示すどころか、「プーチン頼み」以外に選択肢を失った現実を、かえって雄弁に物語っていると言えるかもしれない。