北朝鮮が最近開いた朝鮮労働党中央委員会総会で、2026年の重点課題として農業と炭鉱問題を最優先に掲げたことが分かった。公式には「人民生活の向上」や「地方の均衡発展」を打ち出しているが、内部では体制安定と労働力統制を主眼とした対応との見方が強まっている。

北朝鮮内部事情に詳しい関係者は24日、韓国デイリーNKに対し「今すぐ大量の餓死者が出る状況ではないが、食糧問題が構造的に不安定だという認識は内部で共有されている」とした上で、「そのため今回の総会では、農業を再び最優先課題として前面に出すべきだという意見が出た」と語った。

実際、北朝鮮は今回の会議で農業を「主要な社会主義生産戦線」と位置づけ、小麦栽培の拡大や食糧加工能力の強化を重点課題として提示した。重点地域は黄海南道や平安道の一部穀倉地帯とされる。

北朝鮮は昨年末の総会では、2025年を見据えて戦争対応態勢や軍需・国防分野を最優先に掲げていた。しかし今回の会議では、2026年の核心課題として農業を最初に言及し、食糧と住民生活問題を前面に押し出した。対外緊張よりも内部不安の管理を急ぐ必要性が高まったことを示している。

関係者は「短期間で成果を出すというより、問題が深刻化する前に管理しようという発想に近い」とし、「農業を中長期課題として整理し直す性格が強い」と指摘する。

このため現場では、新規施設の建設よりも既存の農産物加工設備の補強を優先する方向で検討が進んでいるという。資材や資金不足を踏まえた現実的な判断とみられる。

また、慢性的な燃料・肥料不足も依然として深刻な課題だ。関係者は「燃料がなければトラクターも輸送も止まる。中央もそれが最大の制約だと認識している」と語った。

食糧難の要因として指摘されてきた配給制度の見直しも進められる見通しだ。形式上は「配給制度の改善」だが、実際には国家管理と市場流通を併用する混合型制度に近いという。

関係者は「完全な配給制復活でもなく、市場任せでもない。国家が価格と物量を管理しつつ、市場も併用する段階に進もうとしている」と説明する。国家が買い上げた穀物を糧穀販売所を通じて供給し、価格安定を図る狙いもあるという。

ただし、こうした構想が現場で円滑に機能するかは不透明だ。関係者は「穀物を回収することはできても、長期保管や適時輸送は別問題だ。燃料不足や物流環境の悪化で、計画通り届かない、あるいは途中で横流しされる恐れもある」と指摘する。

さらに「国家価格が市場価格より低く設定されれば、穀物は公式ルートに回らず闇取引に流れる。過去も価格統制を強めるほど非公式取引が増えた」とも語った。

一方、総会では西海岸の干拓地農場整備や炭鉱村の改造事業も「革命的課題」として言及されたが、内部の受け止めは冷ややかだという。

関係者は「一部地域で調査や設計は進んでいるが、すぐに成果が出る事業ではない。長期課題として扱われる可能性が高い」と指摘した。

特に炭鉱村改革については、方向性そのものが誤っているとの声も出ている。石炭生産の停滞を労働力不足の問題と捉え、若者動員で解決しようとする当局の認識に疑問が呈されている。

関係者は「問題は人手ではなく、老朽化した設備と崩れた生産体制だ。環境を改善しなければ、誰が来ても生産性は上がらない」と強調し、「準備もないまま若者を送り込めば、適応できず国家全体の生産性を下げかねない」と警鐘を鳴らした。

さらに、党内部では2026年の政策目標そのものが過度に高いとの声も出ているという。

関係者は「総会で示された目標は政治的動員色が強く、現実との乖離を懸念する声が少なくない」と述べ、「資源や財政の裏付けがなければ、多くは象徴的成果にとどまる可能性が高い」と指摘した。