北朝鮮がロシアとの「血盟関係」を誇示しながら踏み切ったウクライナ派兵が、結果的に“最悪の悪手”になりつつある。ロシアから十分な見返りを得られていないことへの不満が、北朝鮮内部で急速に広がっているという。独立系メディアのデイリーNKやサンドタイムズ(ST)は最近、「プーチン大統領に後頭部を殴られたようだ」とする内部の憤りを伝え、体制内部に動揺が広がっていると報じた。
北朝鮮が25日に写真を公開した原子力潜水艦の建造も、ロシアから何らかの協力を得ているものと見られるが、これがしっかり稼働するようロシアが面倒を見ると予想する専門家は少ない。
振り返れば、こうした展開は予告されていたようなものだった。
韓国国家情報院も9月、国会情報委員会への非公開報告で、北朝鮮がロシアに対して「相当な不満」を抱いていると明らかにした。北朝鮮はロシアに1万人以上の兵力を派遣し、推定1000万発を超える砲弾やミサイル、長射程砲などを提供したとされる。しかし、その見返りとして期待していた食糧支援や戦略兵器関連技術の移転、経済的補償は、当初の約束より大幅に縮小、あるいは履行されていないとの内容だった。
北朝鮮内部では「派兵は国家の命運を賭けた勝負だったのに、得たものはあまりに少ない」「ロシアに利用された」との不満が噴出している。特に平壌では、資金繰りの悪化に対する危機感が強まっており、政権中枢では“資金ルートが詰まった”との焦りが広がっているとされる。
(参考記事:「迷惑だ」プーチンからの贈り物に北朝鮮国民ブチ切れ)
こうした状況を受け、ロシアのプーチン大統領は金正恩総書記の不満を和らげようとしていると、国情院は分析する。ただ、最近の首脳間のやり取りでは、金正恩氏が同盟関係の長期化を強調しているのに対し、プーチン氏は将来の具体的協力には踏み込むのに積極的には見えない。
表向きは蜜月を演出する北朝鮮とロシア。しかしその裏側では、「予告されていた裏切り」に直面した北朝鮮の不満が噴き出しつつある。たとえ金正恩氏がロシアとのさらなる協力にのめり込もうとも、体制内部の不協和音の増大にいつまでも耐えることはできないだろう。
ウクライナ戦争という賭けに踏み切った金正恩政権は、いま重大な岐路に立たされているのかもしれない。
