韓国紙・東亜日報の8日付報道によれば、米国の高官が「第1列島線(First Island Chain)防衛の要は韓国の防空力強化である」と強調した。新たな国家安全保障戦略(NSS)発表直後にこの発言が出たことで、米国が対中抑止戦略の中で韓国をどのように位置づけているかが改めて注目されている。

対中抑止戦略で浮上する多層防衛構想

東亜日報の報道によれば、トランプ政権の米高官は5日、「第1列島線の防衛における核心は防空体制であり、韓国も防空戦力を強化すべきだ」と述べた。第1列島線は、米国が中国の海洋進出を封じ込める戦略的ラインとして位置づけており、韓国・日本・台湾・フィリピンを含むアジアの安全保障の要衝だ。高官の発言は、この地域での防空能力が米国の抑止戦略の中核を担うとの認識を示したものとみられる。

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さらに同高官は、「第1列島線の一部兵力配置が最適化されていない」と指摘した。これは在韓米軍の一部再編や役割見直しの可能性を示唆する発言とも受け取られ、今後の軍事バランスに影響を与える可能性がある。米国は地域情勢の変化に合わせて最適な戦力配置を模索しており、韓国の防空網強化はその一環として位置づけられている。

また、高官は攻撃型潜水艦や長距離爆撃機も第1列島線防衛の主要戦力として挙げた。これらの戦力は、敵の接近を阻止する「拒否防衛(denial defense)」の概念を支えるものである。米国としては、韓国の防空網を中心に同盟国間の連携体制を強化し、中国の軍事的拡張を抑止する狙いがあるとみられる。

東亜日報によると、米国は第1列島線を中心とした「拒否防衛」構想を対中抑止戦略の核と位置づけている。この考え方は、同盟国の防衛能力を最大限に引き上げ、相手国の攻撃意志をそもそも挫くというものだ。米国防長官も「第1列島線に沿って持続的に戦力を展開し続ける」と述べており、地域防衛の一体的運用を重視する姿勢を示している。

特に米高官が「防空体制の強化」を重ねて強調した背景には、中国の長距離ミサイルや航空戦力の拡張がある。これに対抗するためには、地上・海上・空中の全領域で重層的な防空網を構築し、弾道・巡航ミサイル、さらにはドローンまでも段階的に探知・迎撃する能力が不可欠だという。米国は韓国がこの多層防衛システムを構築することで、第1列島線全体の防御力が飛躍的に向上すると見ている。

また、韓国に対しては地上レーダーや早期警戒管制機、人工衛星・電子情報収集能力の拡充を求める動きもある。米国は最終的に、日本・韓国・米国の三国間でリアルタイムのミサイル警戒情報を共有し、連動した防空ネットワークを構築することを目指しているとされる。こうした体制整備は、台湾有事を想定した中国の冒険主義を抑止する上で不可欠な要素と位置づけられている。