朝鮮人民軍(北朝鮮軍)が12月から翌年3月末まで実施される冬季訓練に入った。酷寒の中で毎日訓練を行うことから、軍人にとって最も厳しい訓練であり、これ以上に辛いことはない。

一方、一部部隊で給食内容が目に見えて改善されたとデイリーNK内部情報筋が伝えている。普段は雑穀飯に塩漬け大根、具のない塩スープが定番だが、訓練開始後は豚肉、豆腐、卵など“特別食”が提供され、兵士たちの士気が大きく上がり、「記念日みたいだ」「腹さえ満たされれば軍生活はだいぶ楽になる」といった声も漏れている。なかには「365日が冬季訓練ならいいのに」という本音まで出ているという。

デイリーNK内部消息筋によれば、平山郡の第2軍団傘下部隊では、訓練開始に先立ち「兵士に栄養食を提供せよ」との上部指示が下された。この結果、米とトウモロコシを半々に混ぜた飯に、普段はほぼ見られない肉類のおかずが並ぶようになった。常時空腹を訴えていた兵士たちは、民家で食事を乞う必要がなくなった上、親からの生活費を節約できると歓迎している。

しかし、こうした改善は訓練期間だけの“見せかけ”に過ぎないと指摘される。訓練期間中は検閲が多く、部隊は指示通りの給食を整えざるを得ないが、終了すれば「質も元に戻り、兵士たちが再び空腹に苦しむ状況が繰り返されている」と内部消息筋は述べる。また、多くの兵士は普段肉類を食べ慣れていないため、金正恩総書記が特別に配慮した“脂身ご馳走”で体調を悪化させるという皮肉なエピソードもある。

北朝鮮軍の平時の給食改善が難しい理由の一つとして、「上部が下部隊に課す各種の上納要求」が挙げられる。将校たちは上納金を捻出するために食糧を横流しし、その分兵士に回る量が減る悪循環が続く。石鹸や歯磨き粉さえ満足に支給されず、兵士が親に頼ったり、民家で食料を乞う、さらには盗みに及ぶ例まで報告されている。

さらに、冬季訓練の“特別食”の多くは将校の妻たちが負担しており、「一日二日ならまだしも、長期的に続けられるものではない」と不満も高まる。

消息筋は「若さを国家に捧げる兵士たちに、最低限の食事くらい国家が保障すべきだ。腹を空かせさえしなければ国防力は自然に上がる」と強調した。軍内部の食糧事情は、北朝鮮体制の歪んだ構造を象徴している。