フィリピン政府が、韓国製の最新鋭戦闘機「 KF-21ボラメ」 の導入を真剣に検討していることが、現地の英語メディア、The Philippine Starの12月1日付で報じられた。

韓国航空宇宙産業 (KAI)が開発し、量産機の配備を間近に控えたKF-21は、4.5世代に位置付けられるマルチロール戦闘機。双発エンジン、AESA レーダーやIRST(赤外線捜索追尾)センサー、電子戦装備を備え、空対空だけでなく対艦・対地任務への応用が可能な“次世代機”だ。

現地報道などを総合すると、フィリピン空軍はこれまで、KAI製軽攻撃機 FA-50 PH を12機運用してきた経緯がある(うち1機は事故喪失)。さらに、AESAレーダーを搭載した性能強化型FA-50の追加導入(12機)と既存機のアップグレードも決めており、KAIとの協力関係や整備体制の共有という観点から、KF-21への着目は自然な流れだ。

そして、韓国で最近開催された航空防衛展示会 ADEX 2025 において、KF-21のフライト・デモンストレーションが行われ、フィリピンの防衛担当者らがその性能を直接確認したことが、KF-21を“導入候補”の本命に押し上げるきっかけとなったとされる。

フィリピンは、安全保障環境の悪化 ―― 特に南シナ海(西フィリピン海)をめぐる領有権争いや中国の海洋プレゼンスの拡大によって、より高性能な抑止能力を持つ戦闘機の導入が喫緊の課題となっていた。

KF-21導入を巡っては、KAIおよび韓国側が提示するアフターサービス/整備支援、さらに「将来的なメンテナンス/MRO(整備保全)施設のフィリピン国内展開」も提案されており、単なる輸入ではなく長期的な協力関係を見据えた計画が浮上している。

報道によれば、フィリピンはすでに KAI と “Advanced Talks(高度な交渉段階)” に入り、技術仕様、資金調達、供給スケジュール、整備支援および産業参加(ライセンス生産/MRO展開)の可能性などを詰めている。

KF-21は、欧米製の戦闘機(F-16 Block 70/72 など)と比較してコスト競争力が評価されており、“高性能 + 相対的低コスト + 既存の韓国機整備ネットワーク活用” という現実的な選択肢と受け止められている。

ただし、KF-21はまだ輸出実績がなく、正式契約や配備時期、調達数などは未定 だ。

もしフィリピンが KF-21 を採用すれば、その抑止力および防衛能力は、西フィリピン海(南シナ海)での緊張が続く状況において、同国にとって大きな戦略的転換となる。KF-21のような中〜長距離の作戦可能機は、領空防衛だけでなく、EEZ(排他的経済水域)の監視・警戒、海洋権益防衛にも寄与すると期待される。

一方で、輸出元である韓国にとっても、KF-21の初の海外導入国としてフィリピンを獲得することは、防衛産業の国際展開やアジアにおける存在感を高める戦略的な意味がある。

現在のところ、フィリピンの KF-21 導入は 「検討中/交渉中」 であり、正式な発注や数量、配備時期は確定していない。しかし、FA-50 という“韓国製機の既存運用実績”、地理的・予算的制約、そして ADEX でのパフォーマンス評価などを勘案すると、KF-21 はフィリピン空軍の次期主力戦闘機として、非常に現実性の高い選択肢だ。

今後数カ月〜1〜2年のあいだに、契約合意または MOU(基本合意書)が締結される可能性が高く、導入の行方はアジアの安全保障環境にも影響を与えそうだ。