北朝鮮・両江道の三池淵(サムジヨン)市で、住民が人里離れた山間部へ強制的に追放される事例が急増している。三池淵を、忠誠心の高い住民だけが住める「特別管理地域」として運営しようとする意図が背景にあるとみられる。
三池淵市は、金日成が抗日パルチザン闘争を開始した「革命の聖地」であり、大型偶像物や念碑、革命史跡が集中的に建設されたプロパガンダの舞台でもある。デイリーNKの複数の消息筋によると、今年下半期に入り、外部映像の視聴、不法市場での取引、さらには職場への不誠実な参加など、従来なら賄賂や短期の労働鍛錬で済んでいた軽微な行為までもが、即座に追放処分につながっているという。
実は、首都・平壌でも市安全局(警察)が「反社会主義行為・反動思想文化排撃法」に抵触する行為、すなわち韓流コンテンツの視聴や海外文化の影響を受けた市民を追放する事業を、今年9月末から本格的に推進しているとされる。
三池淵市は整備が行き届いた住宅、比較的安定した配給、最新設備の病院など、北朝鮮国内でも突出した生活環境を持つ。恵山市の住民でさえ治療のため訪れるほどで、ここから他地域への追放は重い社会的制裁となる。このため、霊芝(薬用キノコ)の採取や密売などで生計を立てていた住民も、当局の一斉取り締まりを恐れて活動を中断しているという。
住民の間では「三池淵を開発する過程で、脱北者の親族など「身元が不純な人々」はすでに排除され、残った住民からさらに問題人物を選び、示威的に処罰している」という噂が広がっている。実際、11月に入ってからだけでも3世帯が追放処分になったとされ、街全体が極度の緊張に包まれている。
三池淵市の住民は今や、日常の些細な行動さえ当局の“忠誠心テスト”として監視され、いつ追放対象になるか分からないという不安の中で生活している。北朝鮮当局が模範都市のイメージ維持を名目に、住民統制を一段と強化している実態が浮き彫りになっている。
