北朝鮮・咸鏡北道の国境地帯で、国家保衛省所属の保衛員(秘密警察)が「中国キャリアの携帯電話」の使用者摘発に躍起となっている。
北朝鮮内部事情に詳しい情報筋がデイリーNKに語ったところによると、会寧(フェリョン)、茂山(ムサン)、穩城(オンソン)など中国と国境を接する地域で、保衛員が中国製携帯の使用が疑われる住民を訪ね、「今のうちに自首せよ」と圧力をかけているという。
国境地帯では密貿易や送金仲介で生計を立てる住民が少なくなく、当局は彼らの中国携帯が「情報流出・流入の主要経路」として国家安全に脅威を与えるとみなし、取り締まりを長年強化してきた。発覚すれば「教化刑」(懲役刑)を科されるケースも増えており、中央の厳命で取り締まりキャンペーンが過激化して、処刑まで行われる例すらある。
2021年には年末の3カ月間だけで18人が処刑されたという。いずれも中国キャリアの携帯電話を使って密輸や送金ブローカーを営んでいた人々だ。特に、まともな裁判どころか捜査すらずさんなまま、薄暗い密室で撲殺された30代女性の例はいまだ人々の記憶に新しいという。
(参考記事:北朝鮮女性を追いつめる「太さ7センチ」の残虐行為)
それでも依然として多くの住民が商取引や海外送金のために中国携帯を手放せず、保衛員は摘発実績を上げるため、脅迫や懐柔などあらゆる手段を講じている。
情報筋は「国家保衛省から『中国携帯使用者を根絶せよ』という指示が繰り返し下されており、現場の保衛員たちは血眼になっている」と語った。会寧市では、保衛員が疑わしい住民の家を訪ねて自首を迫る事例が相次いでいるが、応じる者は皆無だという。そのため一部の保衛員は「われわれは一瞬たりとも休まない」「1秒の油断も許されない」と脅し文句を並べ、住民に恐怖心を与えている。
地元住民の間では「同じ商売人同士で携帯を貸し借りしていた時代は終わった」との声もある。今では個人が密かに使用する形が一般的で、そのため密告される例も減り、現行犯逮捕されない限り摘発が困難な状況にある。
