北朝鮮とロシアの軍内部で思想・政治活動を統括する中枢組織の幹部らが平壌で相次いで会談を行った。昨年、北朝鮮軍のロシア派兵が公式に確認されて以降、両国の「軍政(軍事政治)」部門が実務レベルで本格的な協力協議に入ったのは今回が初めてで、注目を集めている。
朝鮮中央通信と労働新聞によると、5日、平壌で朝鮮人民軍総政治局代表団とロシア国防省軍事政治総局代表団の会談が行われた。北朝鮮側からは朴英一(パク・ヨンイル)総政治局副局長が、ロシア側からはビクトル・ゴレミキン国防次官兼軍事政治総局長が出席。駐北ロシア大使館の武官部も同席した。軍事政治総局はロシア軍の思想教育、情報統制、対諜報などを管轄する中核組織であり、同局長級の訪朝は初とみられる。
同通信によれば、双方は「両国首脳の戦略的指導の下、深化する関係にふさわしく軍の政治機関間の協力・交流強化策を協議した」という。内容は明示されていないが、派兵軍の運営・管理、前線情報の共有、思想統制・心理戦対応などの実務調整が行われた可能性が高い。
会談後、北朝鮮はロシア代表団のための晩餐会を開催。翌日には努光鉄(ノ・グァンチョル)国防相が再びゴレミキン次官らと会談した。会合にはキム・ジョンギュ外務次官やアレクサンドル・マツェゴラ駐北ロシア大使も同席し、軍事と外交の両面で緊密な連携が確認された。
今回の接触が注目されるのは、北朝鮮軍のロシア派兵が拡大しているためだ。韓国の国家情報院は4日、国会情報委員会で「北朝鮮軍約1万人がロシア・ウクライナ国境地帯で警備任務に当たっている」と報告。さらに工兵1000人余りが地雷除去に投入され、建設部隊約5000人も9月以降段階的に移動しているという。
(参考記事:「北朝鮮兵は倒れるまで殺戮を続けた」ウクライナ軍将校がクルスクで見たもの)
国情院は「北朝鮮国内で追加派兵を見据えた訓練と人員選抜の動きが継続的に確認されている」とし、戦況の長期化で兵力・技術需要が増すロシアが北朝鮮により広範な協力を求めているとの見方を示した。こうした状況下での軍事政治総局間の会談は、派兵部隊の思想管理や情報共有体制の整備、士気維持策の調整などを目的としたものとみられる。
北朝鮮とロシアの軍高官による接触はここ数カ月で急速に活発化している。昨年6月、両国は「包括的戦略的同伴者関係条約」を締結し、同年10月には北朝鮮軍のロシア派兵が公式化。以後、軍代表団の相互訪問や記念行事への共同参加など、政治・軍事チャンネルを広範に稼働させている。
先月には努国防相が代表団を率いてモスクワを訪問し、アンドレイ・ベロウソフ国防相と会談。ロシアへの支持を改めて表明したほか、モスクワ郊外で開かれた「北朝鮮抗日遊撃隊記念像」除幕式にも共に出席した。今回のゴレミキン次官率いる代表団の訪朝は、その「答礼訪問」であると同時に、両国の軍政組織が実質的協力の枠組みを詰めるための場となったとみられる。
