北朝鮮の金正恩総書記は8月14日、朝鮮半島の日本統治からの解放80周年を記念して、平壌の凱旋門広場で演説を行った。北朝鮮では「解放記念日」、韓国では「光復節」と呼ばれる行事である。

金正恩氏が解放記念日に演説するのは今回が初めて。金日成時代には盛大に行われていた行事も、金正日時代には縮小されていた。今回の演説で特に注目されたのは、米韓に一切言及しなかった点だ。朝鮮半島は解放後まもなく分断され、本来なら南北統一の話題に言及すべきだが、金正恩氏は北朝鮮だけで戦後80年間の歩みを振り返る形で、韓国の存在を完全に無視した。

行事にはロシア下院議長ボロージン氏も招かれ、北朝鮮のクルスク参戦への謝意を表した。さらにプーチン大統領の祝電「抗日戦争時の戦闘的友情が今も続く」が代読され、金正恩氏は「歴史上前例のない朝ロ同盟」と述べ、ロシアとの蜜月関係を誇示した。北朝鮮外交が米韓よりもロシア重視に傾いていることを印象付ける場面となった。

一方、金正恩氏の「対韓スポークスマン」ともいえる金与正氏も14日、韓国を「米国の手先」「低劣な国家」と痛罵し、「韓国は敵国」と断言。北朝鮮が南北統一を否定し、韓国を明確に拒絶する姿勢を示した。

こうした状況の中、李在明大統領は15日、光復節恒例の演説を行った。演説は歴史認識や外交的メッセージ、国家戦略の提言などが注目される。しかし、金正恩・与正兄妹の強硬姿勢の前では、李大統領ができるのは「北朝鮮が信頼回復と対話再開の努力に応じてくれることを望む」と哀願する程度にとどまらざるを得なかった。

韓国を拒絶する北朝鮮の本気度に、韓国はいつ気づくのだろうか。